研究課題/領域番号 |
25430142
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
江角 真理子 日本大学, 医学部, 准教授 (10147019)
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研究分担者 |
杉谷 雅彦 日本大学, 医学部, 教授 (40187654)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザーマイクロダイセクション / プロテオミクス / 微小環境 / 再発肝癌 / ゲノミクス / 次世代シーケンサー / ホルマリン固定パラフィン包埋切片 |
研究実績の概要 |
がんは、いきなり正常細胞ががん細胞になる訳ではない。多段階の変化を経てがんに至る。しかもその変化は、周囲の微小環境に依存する。本研究では細胞ががん細胞に至る変化と周囲の環境変化との両局面から、がん進展過程を分子レベルで捉える。平成26年度は以下の点が明らかとなった。 1 レーザーマイクロダイセクション・プロテオミクス 肝細胞癌早期再発群の非癌部では、正常肝や再発遅延群非癌部に比べ、発現変化するタンパク質が多く見つかった。その中で、早期再発群間質にのみ発現亢進する2つの再発マーカータンパク質が、いずれも門脈域の浸潤炎症細胞に発現することがわかった。炎症の質や強さが、がんの発生に関連することが示唆された。C型肝炎ウイルス陽性肝細胞癌では、非癌部ウイルス量と関連するプロテオミクスも実施し、ウイルス産生分泌を制御するタンパク質も見出した。 2 レーザーマイクロダイセクション・ゲノミクス (1)病理診断標本から抽出したDNAによる次世代シーケンサー解析の可能性と限界を明らかにした。さらに人工変異の有無も定量評価した。(2)癌の転移ゲノム解析については、剖検病理標本が有用となる。このような標本からの抽出DNAは、(1)で確立した方法でも厳しい評価となった。が、次世代シーケンサー解析結果の検証実験により、短期間の他臓器転移でも、進展クローンの多様性とその分子進化について明らかにできた。(3)同一症例の無病変組織、非癌部組織、境界病変組織、癌の進展度別組織を採取し、抽出DNAで次世代シーケンサー解析による評価と変異検討を行った。変異を検証中である。(4)肝癌発症モデル動物の病態進展度の異なる組織DNAから、全ゲノム解析を実施した。無病変組織、未病変組織、慢性肝炎組織、肝癌組織では、塩基置換の差は少なく、大きな欠失や転座が予想された。むしろラット生来の塩基置換や欠失が数多く観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザーマイクロダイセクション・ゲノミクスについては、次世代シーケンサーによる解析結果を、別の方法により検証する必要がでてきた。変異箇所個々に検証実験の確立が重要で、確実な結果を得るまでに時間を要するようになった。また、予想外に解析用パソコンのスペックに限界が出てきたり、解析ソフトも発展途上で、思うようには解析が進まなかったりで、これらの問題を解決改善しながら実施してきたため、計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1 レーザーマイクロダイセクション・プロテオミクス: 肝細胞癌早期再発マーカー候補が見つかってきているので、さらに免疫組織化学による再現性を検証しながら、再発難易との関連を意義づける。 2 レーザーマイクロダイセクション・ゲノミクス (1)ホルマリン固定パラフィン包埋組織DNAを用いたゲノム解析が再現性良く実施できるように、抽出方法と解析反応系の改良を行った。その結果、検討できる病理標本は限られてきたが確実となったため、次世代シーケンサー解析と検証解析に必要なサンプルDNAを効率よく増やしていく。さらに各遺伝子変異の検証を効率よく実施するために、定量PCRを確立する。 (2)変異の検証結果から、様々な進展過程の病変における分子進化系統樹を作成し、細胞の分子進化と組織学的変化の関係を明らかにする。 (3)肝癌発症モデル動物のDNA解析を進め、ラット自身の変異の特徴と病態進展に関わるDNA変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーを運転する計画であったが、現有機器の使用が困難であったため、受託解析に変更することとなった。その際、26年度研究費では不足分が発生したため、27年度に繰り越し実施できるようにした。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンサー受託解析に充当する。
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