研究課題
基盤研究(C)
【目的と方法】炎症性発癌の代表的な疾患として,肝炎ウイルス(HBV,HCV)により惹起されるヒト肝細胞癌の発癌過程におけるmiR199aの動態を,ヒトB,C型肝炎ウイルス(HBV,HCV)肝炎,同肝硬変,肝癌,および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)関連肝癌,合計11症例のホルマリン固定パラフィン包埋病理組織切片上で,LNAプローブとタイラマイド増感による高感度in situ hybridization (ISH)法により検出を試みた.【結果】1)miR199a-5pの発現は非癌部(肝硬変)においては1例(1/11),癌部においては4例(4/11)が陽性を示した.いずれも上皮細胞の細胞質に発現が確認された.2)非癌部,あるいは癌部の上皮細胞が一様に陽性となるのではなく,症例によって陽性細胞の割合は異なっていた.3)発癌の原因因子(HBV,HCV,NASH)によって明確な差は見出されなかった.4)プローブは1年以上経過すると反応性の著しい低下を来し,陽性,陰性の判定が困難となった.5)形質細胞は特に強い非特異的反応を示し,判定の妨げとなることが多かった.6)miR199a-3pの発現は検討しなかった.【考察ならびに今後の計画】1)ISHプローブの改良の必要があると思われる.具体的な今後の方針としては,①ATの繰り返し配列をtemplateとするISH-AT taling法を試みる,②LNA以外の人工核酸(BNA等)で修飾したプローブを用いる.3)miR199a-5pの発現制御に関わる他の因子(Brm,Caveolin 1等)に関して,免疫組織化学的に検討する.4)以上の結果を総合的に判断し,miR199a をめぐる遺伝子制御ネットワークを考察するとともに,治療あるいは診断に応用可能な新規マーカーの検索の一助とする.
4: 遅れている
現時点では,従来まで用いてきたISHプローブが良好に機能しにくく,シグナルの検出が困難な状況にある.その理由としては,プローブの劣化(蛍光シグナル強度の低下など)が第一に考えられたが,新たに作製したプローブを用いても研究計画申請時のような良好なシグナルが得られなくなっている.その対策には,抜本的なプローブの改良の必要もあると考えている.症例の病理組織切片は貴重であり,それらを用いた解析を行う以前に十分にプローブの有効性を検討しておく必要がある.従って,今年度に検索した病理組織切片は申請書に記載した検索対象とは異なる症例ではあるが,予備実験として行い,比較的良好な結果を得られたデータの報告に留まっている.
具体的な今後の方針として,1)ATの繰り返し配列をtemplateとするISH-AT taling法を試みる,2)LNA以外の人工核酸(BNA等)で修飾したプローブを用いる.などの方法で新たにプローブの有効性を検討する.1)に関しては,すでにプローブの作製は終了しており,切片を用いての解析に着手した.
申請時の研究計画に遅れが生じているため,H25年度中に使用予定であったLNA/DNAオリゴヌクレオチドプローブ合成,抗体ならびに免疫組織化学染色用キットに係る費用に余剰が生じた.申請時の計画の修正に従い,新しく考案したプローブの作製費や,抗体ならびに免疫組織化学染色用キットの新規購入に充てる.
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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