研究課題/領域番号 |
25430143
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
稲田 健一 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (70246081)
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研究分担者 |
塩竈 和也 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10387699)
水谷 泰嘉 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10546229)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | miRNA / in situ hybridization / 病理組織切片 / 扁平上皮癌 / 肺癌 / 子宮頸癌 / 慢性炎症 / 炎症性発癌 |
研究実績の概要 |
【方法】今年度はmiRNA-199a(199a)を対象とするin situ hybridization (ISH)法プローブの改良から着手,以下を計画,実施した.1)ATの繰り返し配列をtemplateとするISH-AT taling法,2)LNA以外の人工核酸(BNA等)で修飾したプローブを作製,3)良好なシグナルを得られた後に199aに関する症例解析,4)Caveolin-1,c-met,CD44,E-Cadherin,EGFR,Brmの発現を免疫組織化学的に検索,199aの発現との関連性を検討する. 【結果】1)2)いずれも改善をみなかった.再度,新規LNAプローブを設計したところ漸く改善した.そこで以下の症例解析に着手した.3)4)①肺原扁平上皮癌(SCC)21例,②子宮頸部SCC16例,③皮膚原発SCC3例である.これらは本研究課題とは異なる症例だが,食道原発SCCを対象とした解析(Sakurai K et al., 2011.)で199aの発現パターンが十分把握されており,まずSCCを重点的に解析した.①199aは癌胞巣周辺部に明瞭に染色された.胞巣中心に向かって角化が進行する箇所では染色性が徐々に低下し,角化部分は陰性であった.これらの部位はCD44,Brmは陽性であった.c-met,caveolin-1もCD44,Brmと概ね類似した発現を示した.cadherinは角化部を除きほぼ腫瘍全体が染色された.EGFRはCD44,Brmよりも限局してより未分化な細胞に染色された.②子宮頸部SCCではCD44とBrm発現は概ね相関していた.199aは規則性を見出せなかった.③皮膚原発SCCではCD44,Brm発現は相関していたが,癌真珠の部分での199a発現は確認されなかった. 【考察】新規プローブは有効であった.同じSCCでも発生部位の違いにより199a発現パターンが異なっていた.このことは199aが各臓器の癌発生に関し異なった意義を有する可能性を示唆している.正常扁平上皮では一貫して基底層部を除く部位に発現をみたことから,扁平上皮の分化,成熟過程の制御に関与している可能性があると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
in situ hybridization法のプローブの不具合で解析が全くできない時期が長くあった.正確な原因は不明であったが,具体的には,解析の陽性対象としたレンチウイルスベクター導入によるmiRNA199a強制発現細胞株を用いた解析でも全く良好なシグナルを検出できなかった.その結果,病理切片を用いた症例解析に大幅な遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に沿った慢性炎症を背景とする発癌過程でのmiRNA関与の検索のために,Helicobacter pylori (HP)陽性慢性胃炎,HP陰性慢性胃炎,胃癌症例の病理組織学的切片を対象とした解析に着手する.症例はすでに集積済みであり,倫理委員会の審査も終了している.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の研究計画に遅れが生じているために,H26年度中に使用予定であったプローブ作製費,その他の消耗品使用額が大幅に減少し,余剰金として繰り越された.
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次年度使用額の使用計画 |
申請時の計画の修正に従い,主に消耗品のために適正に使用する.具体的には,新規プローブ作製費,抗体,免疫組織化学染色用キットなどの新規購入に充てる.
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