研究課題/領域番号 |
25430144
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
津田 均 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (70217321)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳癌 / 化学療法効果予測 / バイオマーカー / トリプルネガティブ乳癌 / 免疫組織化学 / ゲノム / 上皮間葉移行 / 化生癌 |
研究概要 |
術前化学療法のレジメンが無効でむしろ病状進行(progressive disease、PDと略)となる乳癌を予測できる分子マーカーを見出すことを目的とした。1990年1月~2012年9月までに手術を実施された原発性トリプルネガティブ(TN) 乳癌(ホルモン受容体陰性、HER2陰性)症例の中から、「術前化学療法中にPDを認め、手術を先行した症例」(PD群)23例と「術前化学療法を行わずに手術を行った症例」(対照群)87例の計110例を抽出した。症例数は術前化学療法によつPD率5%という一般的頻度に基づき算出した。ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE)腫瘍組織標本と凍結腫瘍組織標本が良好な状態で保存されていることを確認した。切除検体のFFPEから2mm 径の組織アレイを構築し、上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition, EMT)関連分子の免疫染色を行った。また、組織形態学上、EMTに関わるとみられる「紡錘細胞化生、骨・軟骨化生、扁平上皮化生を伴う癌/化生を含む癌(合わせて化生癌と略す)」の頻度をPD群と対照群で比較した。【結果・考察】PD群においてアンスラサイクリン系抗がん剤投与中のPD例は4例、タキサン系抗がん剤投与中のPD例が22例あった。vimentin(細胞質), TWIST NB, ZEB-1(共に核)の陽性率はPD群で91、26、35%に対し、対照群では各52、2、15%であり、有意にPD群で陽性率が高かった。手術検体の病理所見はPD群では化生癌11例であったが、対照群では化生癌は2例であった。またPD群の中で化学療法前後の腫瘍組織像を比較したところ、化生癌の頻度は化学療法の前後で13%から40%に上昇していた。EMTが起きていることを示す分子群や組織所見が、PD群は対照群に比較し有意に高頻度で見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者の異動により、研究費の執行が十分にできなかった。しかしながら、第1年度に研究計画に沿って、過去のデータベースからの症例選択、検体の保存の確認、組織アレイ構築、トリプルネガティブ乳癌であることの免疫組織化学による検証など研究の基盤となる部分をほぼ計画通り行うことができた。また、上皮間葉移行(EMT)関連の分子に絞って検討を進め、データを出すことができた。おおむね順調の範囲内に入ると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度、27年度は平成25年度の研究成果を国内外で公表するとともに、同一の組織アレイを用いて、細胞増殖マーカー(Ki-67)、癌幹細胞に係る分子、イオンチャンネル、BRCA1関連分子等に対する抗体パネルを重点的に選び、免疫染色によるスクリーニングを進める。実験助手を雇用し、研究の進捗を加速する。有意な分子が既にいくつか見つかっているがさらに多くを見出し、別コホートを用いてvalidationの検討を企画、推進する。さらにゲノムやプロテオーム研究グループと連携して得られたエクソームやアレイCGH解析によるデータを解析していく。これらの結果を英文論文として公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主任研究者が平成25年4月に異動となり、研究を十二分に進めるまではいかなかったため研究費をフルに使用できなかった。平成26年度となり、研究環境も整った。 平成25年度から26年度に繰り越した助成金を、実験補助者の雇用と物品費、論文作成料、研究旅費に充てる。平成26年度分として請求した助成金は予定通り、物品費、研究旅費、その他に充てる。
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