研究実績の概要 |
トリプルネガティブ乳癌(triple-negative breast cancer, TNBC; エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2の発現がいずれも陰性の乳癌)の中でanthracycline-based regimen→taxaneによる術前化学療法により臨床的病状進行(clinically progressive disease, cPD)となった例22例を対象に病理組織学的および分子レベルでの特徴を検討し、その結果を解析した。対照群は術前化学療法を行わずに手術療法が行われたTNBC80例である。これらの症例につき組織所見と12種類の分子についての免疫組織化学的検討を施行した。対照群と比べてcPD群でより高頻度であった組織学的因子は化生を伴う癌と細胞増殖指標(核分裂像数10高倍視野あたり40個以上、或はKi-67陽性細胞率50%以上)であり、免疫組織化学的因子はcytokeratin 5/6(CK5/6), 細胞質HMGB1, ZEB1, TWIST NB, vimentin, 核Snail-2、アンドロゲン受容体(AR)陰性であった。EGFR, BRCA1, Eカドヘリンは両群で陽性率に差がなかった。cPD群、対照群を合わせた102例につき、これらの因子の間でクラスター解析を実施し、ヒートマップを作成した。その結果、TNBCは、1. 極めて高い細胞増殖指標、2. 上皮間葉移行指標(vimentin, ZEB1, TWIST NB)、3. basal-like マーカー(CK5/6)、4. AR(陰性)、の発現状況の組み合わせから7群に分類され、cPD群がその中の3群に高頻度で含まれるとともに、それらの3群は化生癌の頻度が高く、アポクリン癌の頻度が低く予後が不良であった。上記のマーカーの組み合わせがcPD群と相関した。本研究成果はCancer Science誌に受理された。今後、cPDとなる群をあらかじめ予測できるかどうかについて検討を行っていきたい。
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