研究課題/領域番号 |
25430149
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横田 明日美 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00571556)
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研究分担者 |
平位 秀世 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50315933)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白血病幹細胞 / 慢性骨髄性白血病 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、転写因子C/EBPβの発現を慢性骨髄性白血病(CML)細胞で上昇し得るサイトカインについて、予備検討の結果からInterferon alpha(IFNα)の1つに絞り込み、in vitroとin vivoの両方において検討を行った。 In vitroの実験においては、IFNαがC/EBPβを介して白血病幹細胞(LSC)の枯渇を誘導することをcolony assayの実験系を用いて明らかにした。また、造血幹細胞様の性質を有し、多系統への分化能を保持する細胞株であるEML細胞を用いて、BCR-ABLおよびIFNαを含む様々なサイトカインによって活性化されるSTAT5がEML細胞のミエロイドへの分化を強力に誘導すること、その分化にはSTAT5によって発現誘導されるC/EBPβが関与していることをsiRNAによるC/EBPβのノックダウンによって示した。今後、STAT5によるC/EBPβの発現上昇の詳細なメカニズムを調べるため、ChIP-seqを予定している。 In vivoでの実験においては、CMLモデルマウスを用いてLSCに対するIFNαの効果について検討を行った。BCR-ABL導入骨髄細胞を移植した1次レシピエントへのIFNα誘導性PolyI:C投与後、これらマウスから骨髄細胞を回収し2次レシピエントへ移植した。1次レシピエント骨髄細胞における未分化造血幹細胞・前駆細胞分画中のBCR-ABL発現細胞の占める割合、また2次レシピエントにおける白血病発症個体の頻度を指標として、PolyI:C投与の効果を評価した。これまでの予備的実験の結果から、PolyI:Cは用量依存性にLSCを枯渇させること、またこの作用はC/EBPβを介したものであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の時点で候補に挙がっていたC/EBPβの発現を誘導し得る複数のサイトカインのうち、IFNαの1つに絞ることができたため、必要な実験を絞り込むことができ、当初の計画よりも早く進めることができた。その分、より詳細な検討を行うことができた実験もあった。さらに、in vivoのPolyI:Cの投与量、投与期間、移植細胞数の条件検討についても、並行して進めることで最適と思われる条件を予定よりも早期に設定することが可能であったため、CMLモデルにおける実験も順調に進めることができた。ほぼ研究計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、LSCに対するC/EBPβを介したIFNαの単独の作用を示すことができたが、実際のCML治療においてはチロシンキナーゼ阻害剤との併用が最も可能性のある使用法となると考えられる。よって、我々のCMLモデルにおいて、チロシンキナーゼ阻害剤の単剤使用とIFNαとの併用使用での治療効果の比較検討についても行いたいと考えている。 また、C/EBPβは細胞分化、細胞周期、サイトカイン産生、ケモカイン・サイトカイン受容体の発現を制御することが知られている転写因子であり、これらC/EBPβの標的遺伝子の機能・発現とLSCの動態、白血病の進展、薬剤反応性について、本研究成果を踏まえて詳細な検討を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ血液学会への参加・研究成果発表に関して計上していた参加費・渡航費・滞在費について、 文部科学省より若手研究者を対象とした国際交流派遣の助成をいただき、この助成金より全て支出可能であったため、旅費として申請していた分が次年度使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に予定しているChIP-seqに関して、免疫沈降に用いる抗体やビーズへの支出が多くなることが見込まれ、その購入に充てる予定である。また、CMLモデルマウスの作成にあたっても多数の実験動物の購入が必要となるため、これらの購入費用を補うための使用も考慮に入れている。
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