研究課題
大腸がんを標的とし天然物を利用することで毒性の少ない抗がん薬を開発した。天然中鎖脂肪酸をリードとして増殖抑制効果と腫瘍選択性に優れた新規抗がん薬palmitoyl piperidinopiperidine(PPI)を創製した(特許第5597427, 2014)。In silico解析においてPPIは転写因子STAT3のSH2 domainに結合することが予測された。In vitroではPPIはヒト大腸がん細胞株SW837およびHT29においてSTAT3の転写活性およびpSTAT3の発現を抑制した。pSTAT3/STAT3が核分画で減少した。これはPPIがSTAT3のリン酸化の抑制と核内移行阻害により転写を抑制することを示唆する。PPIはSTAT3の標的遺伝子であるcyclinD1、Bcl-xL、Bcl-2の発現を減少させp53の発現を増加させた。フローサイトメトリーでは細胞周期のG1 arrestおよびapoptosisを誘導した。また、STAT3の別の標的遺伝子である血管新生に関与するVEGFの発現をPPIは減少させ、鶏卵漿尿膜法により血管新生を用量依存的に抑制した。PPIはヌードマウスに移植したがん細胞に対して体重減少を引き起こすことなく有意な腫瘍縮小効果を発揮した。移植された腫瘍内においてcleaved caspase3陽性細胞の増加およびCD34陽性血管数の減少を認めたことから、in vivoにおいてもapoptosis誘導と血管新生を抑制することがわかった。PPIはラット大腸前がん病変の発生を有意に抑制した。これらの結果から、私たちが開発した抗がん薬PPIはSTAT3の二量体形成およびSTAT3リン酸化阻害によりSTAT3が制御する分子の発現に影響しapoptosisの誘導、血管新生および細胞周期の抑制にはたらき最終的に抗がん効果を発揮していることが示された。
特願2015-070424、抗がん剤、出願2015年3月30日、出願人:名古屋市立大学、(株)日油、発明者:酒々井眞澄、飯沼宗和、森田彰特許第5237884号、抗がん剤、出願2009年5月27日、取得2013年4月5日、発明者及び特許権者:酒々井眞澄、飯沼宗和特許第5597427号、抗がん剤、出願2010年3月30日、取得2014年8月15日、発明者及び特許権者:酒々井眞澄、飯沼宗和
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) 備考 (1件)
Cancer Sci
巻: 107 ページ: 924-935
10.1111/cas.12954.
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/moltox.dir/index.html