研究課題
基盤研究(C)
本研究は、難治性成人T細胞白血病(ATL)を対象にして、CADM1(Cell Adhesion Molecule 1)抗原やCD30抗原を認識するキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor; CAR)発現T細胞を用いる養子免疫遺伝子療法を開発することを目的とした。本年度の研究成果としては、1)ATL細胞の標的化のため、CADM1及びCD30に対する単鎖抗体を用いて新たなCARを作製し、レトロウイルスベクターに組み込んだ。一過性導入を行った293細胞におけるCAR遺伝子の発現は、フローサイトメトリー解析及びウエスタンブロット法で確認した。2)ヒトT細胞への遺伝子導入のため、PG13細胞を基にレトロウイルス産生細胞の樹立を試みたところ、CADM1特異的CARウイルスの産生細胞については、機能的なレトロウイルスが十分に得られなかった。一方、CD30特異的CARウイルスの産生細胞については、高力価のレトロウイルスを産生するものが得られた。3)レトロウイルスベクターによりCD30特異的CARをヒト末梢血T細胞に導入したところ、細胞表面におけるCARの発現率は30~40%であった。4)予備検討の結果、CD30特異的CARを発現させたT細胞は、CD30陽性ATL細胞株に対する細胞傷害活性を試験管内で示した。以上の結果より、当該免疫療法は、ATLに対して有効である可能性が示唆され、CAR発現T細胞の機能評価を継続して行う。
3: やや遅れている
ATL細胞を標的とするため、CADM1に対するCARを発現するレトロウイルスベクターを作製したが、高力価を有するウイルス産生細胞が今のところ得られていない。CD30に対するCARのベクター調整は順調であり、一部、殺細胞効果も認められている。
CADM1に対するCARに関しては、レトロウイルス産生細胞の再作製及びCADM1に対するCAR配列の改良を行い、ベクター調整の改善に取り組む。CAR発現T細胞の抗腫瘍活性を試験管内及びマウスを用いた治療実験で評価する。
各年度の配分額と研究内容を考慮し、平成25年度分の一部を平成26年度以降にまわすようにした。研究費は、ウイルスベクター調整、T細胞の培養に必要な経費や実験用動物関連の物品費、関連学会出席のための旅費などに使用する予定である。
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