研究課題
本研究では、難治性成人T細胞白血病(ATL)を対象にして、CADM1(Cell Adhesion Molecule 1)抗原やCD30抗原を認識するキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor; CAR)発現T細胞を用いる養子免疫遺伝子療法を開発することを目的とした。本年度の研究成果としては、1)ATL細胞の標的化のため、昨年度にCADM1およびCD30に対する単鎖抗体を有するCAR遺伝子を搭載したレトロウイルスベクターを作製したが、これらに加えて、CADM1に対する改良型CAR発現レトロウイルスベクターを作製した。2)ヒトT細胞への遺伝子導入のため、PG13細胞をもとに組み換えレトロウイルス産生細胞を作製した。3)作製したレトロウイルスベクターによりCADM1およびCD30に対するCARをヒト末梢血T細胞に導入したところ、細胞表面におけるCADM1に対するCARの発現率は15%程度と低値であったが、CD30に対するCARの発現率は半数以上と高値であった。4)CD30に対するCARを発現させたT細胞は、CD30陽性ATL細胞株に対して、殺細胞効果を試験管内で示した。一方、CD30陰性Bリンパ腫細胞株に対しては、その活性をほとんど示さなかった。以上の結果より、当該免疫療法は、ATLに対して有効である可能性が示唆され、CAR発現T細胞の機能評価を継続して行う。
3: やや遅れている
ATL細胞を標的とするため、CADM1に対するCARを発現するレトロウイルスベクターを作製してヒト末梢血T細胞へ導入したが、その発現効率は低かった。CD30に対するCARのベクターの遺伝子導入効率は良好であり、殺細胞効果も試験管内で認められている。
CADM1に対するCARに関しては、レトロウイルス産生細胞の再作製及びCADM1に対するCAR配列の改良を行ったが、改善が認められなかったので、CD30に絞ってCAR発現T細胞の抗腫瘍活性を試験管内及びマウスを用いた治療実験で評価する。
各年度の配分額と研究内容を考慮し、平成26年度分の一部を平成27年度にまわすようにした。
研究費は、ウイルスベクター調整、T細胞の培養に必要な経費や実験用動物関連の物品費、関連学会出席のための旅費などに使用する予定である。
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