研究課題/領域番号 |
25430156
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
堀内 大 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (30608906)
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研究分担者 |
小林 信春 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10150616)
赤塚 俊隆 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30159321)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抗腫瘍ワクチン / TERT / リポソーム / CTL / 改変ペプチド |
研究実績の概要 |
平成25年度はリポソーム表面に結合することで強力な細胞傷害性T細胞(CTL)応答を惹起できる複数のエピトープを発見した。特にnativeなペプチドのMHC結合部位のアミノ酸を置換してMHCとの結合性を高めた改変ペプチドを結合したリポソームは非常に強力なCTL応答を誘導することを見いだした。また、これらのエピトープ配列は未だ報告の無い新規の配列であった。 平成26年度は、昨年度に同定したTERT由来エピトープの中でCTL反応を最も強く誘導した#14抗原(#13抗原の改変抗原)に焦点をあて、HHDマウスを用いた腫瘍移植実験により本ワクチンの抗腫瘍効果を検討した。また、#14抗原表面結合リポソームワクチンと#14抗原ペプチド+不完全フロイントアジュバント(IFA)のCTL誘導能の比較をMHCマルチマーを用いて行った。 腫瘍移植実験では、コントロールとしてHCV由来抗原ペプチド結合リポソーム、#13ペプチド結合リポソーム、#14ペプチド結合リポソームのそれぞれでHHDマウスを免疫した後、TERTを発現しているRMAHHD細胞を皮下移植し、腫瘍面積と移植マウスの生存日数を検討した。その結果、#14群はコントロール群および#13群と比較して有意な腫瘍増殖の抑制と生存日数の延長を認め、本ワクチンの免疫により抗腫瘍効果がもたらされることが明らかとなった。また、この#14抗原ペプチドはリポソーム表面に結合すると非常に強力なCTL反応を誘導するが、ペプチド+IFAによる免疫ではCTL反応は明らかではなかった。この結果は従来の免疫方法では免疫反応が引き起こせないエピトープに対して抗原表面結合リポソームが強力な免疫反応を誘導できることを示唆しており、抗原表面結合リポソームは従来の抗腫瘍ワクチンを補完する新しいワクチンとなりうることを示した重要な結果である。従って新しい抗腫瘍ワクチンの開発と言う本研究の主目的の達成に近づく大きな進歩であり、大変意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、本年度はHLA-A2拘束性ワクチンとともに、HLA-A24拘束性ワクチンの検討を行う予定であった。しかし、HLA-A24トランスジェニックマウスに感染症の問題があったため、本年度はHLA-A2拘束性ワクチンに集中して検討し、抗腫瘍効果や長期の免疫記憶の誘導などの好結果が得られたため、平成27年度に予定していた国内特許出願を行った。 HLA-A24トランスジェニックマウスに関しては熊本大学に微生物クリーニングを依頼し、実験実施に十分な数の清浄マウスが平成27年度早々に搬入されるよう手配した。 現時点ではHLA-A24の研究実施に関しては予定より遅れているが、HLA-A2の検討においては研究目的がほぼ達成され、HLA-A24拘束性ワクチンに関する研究遂行のための手段は確立されている。以上より本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
微生物クリーニングにより清浄化したHLA-A24トランスジェニックマウスが平成27年度4月に搬入されるため、HLA-A2拘束性ワクチンの検討と同様の実験をただちに開始する。免疫実験に使用するエピトープペプチドおよび表面結合リポソームワクチンは既に作成してある。 また、汎腫瘍抗原TERTのアミノ酸配列の中でHLA-A2拘束性エピトープとHLA-A24拘束性エピトープを多く含む部位をロングペプチドとして合成しており、これを表面結合したリポソームをHHDマウスおよびHLA-A24トランスジェニックマウスに免疫し、CTL反応を検討することでHLA-A2, HLA-A24の両者に使用可能な汎腫瘍ワクチンの開発の可能性を模索する。 さらに、ワクチン単独での免疫誘導能をより高めるための工夫としてαガラクトシルセラミドをペプチドとともにリポソーム表面に結合することを発案し、平成26年度末より実験準備を開始しており、αガラクトシルセラミドの併用による免疫誘導効果および抗腫瘍効果の増強についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、平成26年度はHLA-A24拘束性ペプチドを用いた抗原表面結合リポソームの免疫実験を行う予定であったが、HLA-A24トランスジェニックマウスに感染症の問題があり、HLA-A24に関しては本年度はマウスの微生物クリーニングを行ったのみで、免疫実験は次年度に持ち越しとなったため、免疫実験実施に必要な諸経費が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度初頭に微生物学クリーニングが済み清浄化されたHLA-A24トランスジェニックマウスが搬入される。当該の次年度使用研究費はこの清浄化マウスの搬入および維持・繁殖費用と、このマウスを用いた免疫実験に使用する試薬や実験消耗品の購入費として使用する。さらに、本研究の研究成果を学会発表および論文報告するための諸費用に研究費を使用する。
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