研究課題/領域番号 |
25430157
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西田 浩子 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (80317130)
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研究分担者 |
山田 健人 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (60230463)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / CD26 / TRAP / ヒト化抗CD26モノクローナル抗体 / p38 MAPK / mi/Mitf / 多発性骨髄腫 / 血液内科 |
研究概要 |
骨リモデリングにおいて、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成は均衡を保ちながら骨強度を維持している。ところが、多発性骨髄腫などの溶骨性骨腫瘍においては、腫瘍の進展と同時に、骨芽細胞と破骨細胞の平衡状態が維持されず、骨吸収作用をもつ破骨細胞の活性化がもたらされ、骨破壊が進行する。そこで、正常ヒト破骨細胞においてCD26が機能的に発現し、さらに多発性骨髄腫や乳癌などの悪性腫瘍の溶骨性骨転移において、活性化破骨細胞にCD26が高発現することに注目し、正常ヒト破骨細胞発生過程におけるCD26の機能、ヒト化抗CD26モノクローナル投与による骨融解抑制効果およびその作用機序について研究を開始した。 CD26は正常ヒト造血幹細胞には発現がみられないが、単球、マクロファージに分化した段階で発現がみられ、そして、破骨前駆細胞、成熟破骨細胞と分化成熟が進むにつれ、発現が増強する。ヒト化抗CD26抗体は、破骨前駆細胞分化レベルにおいて、細胞内のMKK3/6-p38MAPKリン酸化および、核内のmi/Mitfリン酸化を抑制することにより破骨細胞への分化、およびそれに続く成熟を抑制し、結果的に骨吸収を抑制した。一方、抗CD26抗体は、成熟破骨細胞分化レベルでは直接の抑制効果を示さなかった。 これと並行し、ヒト多発性骨髄腫の破骨細胞形成過程におけるヒト化抗CD26抗体効果を検討も行い、同様の結果を得た。さらに、破骨細胞―骨髄腫細胞共培養を行うと、元々CD26陰性の骨髄腫細胞にCD26発現誘導効果がみられることがわかった。骨髄腫細胞は骨髄においてCD26陽性の血管内皮細胞近傍でCD26発現が増強傾向にあることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定とは少し異なるが、ヒト破骨細胞におけるCD26の機能と、ヒト化抗CD26モノクローナル抗体投与が破骨細胞分化に及ぼす効果および、その機序を、破骨前駆細胞を用いた機能解析により証明することに成功し、研究の大きな進展が認められた。また、これらの研究成果は、2014年4月に、国際学術誌に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
多発性骨髄腫において骨髄間質細胞(破骨細胞、血管内皮細胞)と骨髄腫細胞の相互作用が、骨髄腫細胞におけるCD26発現に及ぼす効果および機序について基礎的検討を引き続き進める。 多発性骨髄腫骨髄を用いた病理学的解析では、血管内皮細胞近傍のCD26を高発現する形質細胞が目立つ傾向にあり、また血管内皮細胞はCD26陽性であることから、骨髄腫細胞と破骨細胞の相互作用のみならず、血管内皮細胞との交互作用も、骨髄腫細胞のCD26発現に関与している可能性が考えられている。しかし、骨髄腫細胞において、CD26発現が、血管内皮細胞、破骨細胞からどのような作用を受け増強されるのかは全くわかっていない。そこで、多くの細胞分化、増殖に関わる蛋白の発現の変化や蛋白間の相互作用の生物学的意義について実験的検証を行う。そして、骨髄腫細胞でCD26発現が増強した場合に、細胞増殖サイクルに及ぼす影響についても解析を行う。併せて、ヒト化抗CD26抗体による骨髄腫抑制効果の検討および、機序の解析を行い、多発性骨髄腫マウスモデルを用いた実験も予定している。
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