研究実績の概要 |
正常ヒト破骨細胞においてCD26が機能的に発現し、さらに、多発性骨髄腫ほか溶骨性骨腫瘍において、破骨細胞にCD26が高発現することから、前年度までに、正常ヒト破骨細胞発生・分化・活性化におけるCD26の発現および機能について解析を行い、1) CD26は破骨細胞発生過程において、単球・マクロファージ・破骨前駆細胞・破骨細胞と分化するにつれ発現が増強すること、2) ヒト化抗CD26モノクローナル抗体は、破骨前駆細胞分化段階で作用し、RANK下流シグナルにおいて細胞質内のMKK3/6, p38MAPKリン酸化、それに続く核内のmi/Mitfリン酸化を阻害することで、TRAP発現を抑制し、破骨前駆細胞より破骨細胞へ分化を阻害し、骨吸収を抑制すること、3) ヒト化抗CD26抗体は、直接成熟破骨細胞には作用しないことが明らかとなった。 本年度は、さらにヒト化抗CD26抗体投与の効果を生体内で検討した。すなわち、ヒト正常骨片をNOD/SCIDマウス皮下に移植、その後多発性骨髄腫細胞を骨片内に移植し、溶骨性骨転移モデルを作成した。血清免疫グロブリン値(Ig)上昇が得られた後、抗体投与を行うと、コントロール群では、病理組織上、TRAP/CD26陽性破骨細胞が多数認められたのに対し、抗体投与群では、TRAP/CD26陽性破骨細胞は著明に減少した。以上より、ヒト化抗CD26抗体が、生体内においても骨融解抑制効果が示すことが明らかとなり、骨髄腫ほか溶骨性骨病変を有する悪性腫瘍において、ヒト化抗CD26抗体を、原病の治療と併用することで、骨関連事象軽減に有効であることが示唆された。 また、骨髄腫患者骨髄において、CD26陽性破骨細胞および血管内皮細胞近傍に、CD26陽性骨髄腫細胞が認められ、培養系では、骨髄腫細胞と破骨細胞の共培養において、骨髄腫細胞および破骨細胞のCD26発現が増強することが明らかとなった。今後は骨髄腫細胞におけるCD26の発現および機能、ヒト化抗CD26抗体の骨髄腫進展に及ぼす効果について検討を継続する。
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