研究課題/領域番号 |
25430160
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
伊井 正明 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10442922)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリー |
研究概要 |
H25年度は、腫瘍集積性を有するヒト脂肪組織由来幹細胞(adipose-derived stem cell: AdSC)に抗癌剤含有ナノ粒子を包合させ、細胞外への抗癌剤徐放の最適化を目的として実験を行った。 ピラルビシン含有ナノ粒子(200-300nm径)のAdSCへの包合に関する実験では、粒子に対する抗体修飾などは必要無く、単純に培養液中で粒子と細胞を37℃で1時間程度インキュベーションすることによって細胞内に粒子が抱合されることが確認できた。次に、ピラルビシン含有ナノ粒子包合AdSCからの培養液中への薬剤徐放を確認したところ、3-4週間以内で全ての薬剤が放出され予想通りの結果が得られた。しかし、薬剤徐放中の細胞死が予想よりも早い段階(48時間以内)で認められたため、今後のin vivo実験におけるマウス皮下腫瘍実験では腫瘍集積性の低下が予想される。 上記の実験結果から、細胞での粒子包合後の抗癌剤の放出タイミングが早いことに起因すると考えられたため、当初の計画に加えて抗癌剤を温度感受性リポソームに内包の後にAdSCに取り込ませる方法も今後試みる。これはリポソーム包合AdSCを適当な温度(42-3℃)で加温することによって、リポソームの性状を変化させて含有している薬剤を放出できるシステムであり、in vitro実験だけでなくin vivo実験においても薬剤放出のタイミングをコントロールできる利点がある。 次年度には、脂溶性抗癌剤であるピラルビシンの代わりに水溶性抗癌剤のテラルビシンを用いて温度感受性リポソームを作製し、今年度と同様に細胞外への薬剤徐放試験を行い、最適化を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実験目標である抗癌剤含有ナノ粒子のAdSCへの包合方法の最適化と細胞からの抗癌剤徐放については成果が得られた。また、その抗癌剤によるAdSC自身への影響についても予想とは一部異なる結果であったが有用な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
抗癌剤の徐放システムとして、PLGAナノ粒子以外に温度感受性リポソームを用いた方法も試みる予定である。リポソーム法による薬剤徐放システムが最適化できれば今後行う予定であるin vivo実験における腫瘍縮小効果はさらに期待出来るが、温度応答性に薬剤を放出するためにはリポソーム膜の組成を調整する必要があり、重要な検討課題になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬剤徐放システムの最適化実験で条件検討に時間を要したため、試薬などの消耗品の使用量が当初の予定よりも少なかったため。 薬剤徐放システムの最適化実験が進めば、温度感受性リポソーム作製のために必要な試薬の購入や薬剤放出試験の委託解析料に使用する予定。
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