研究実績の概要 |
昨年度の実験結果では、ピラルビシン含有ナノ粒子(200-300nm径)のAdSCへの包合に関する実験では、粒子に対する抗体修飾などは必要無く、単純に培養液中で粒子と細胞を37℃で1時間程度インキュベーションすることによって細胞内に粒子が抱合されることが確認できた。しかしながら、ピラルビシン含有ナノ粒子包合AdSCからの培養液中への薬剤徐放を確認したところ、薬剤徐放スピードが予想よりも速く、細胞死が早い段階(48時間以内)で認められた。 平成26年度は、昨年度の問題点を克服するためにピラルビシンのナノ粒子からの徐放スピードを遅くするための工夫として、脂溶性のピラルビシンを水溶性のドキソルビシンに変更し、またPLGAナノ粒子の組成も変更しようとしたが、粒子の作製が困難であり薬剤徐放の確認にまでは至っていない。 また、抗癌剤の徐放スピードコントロール目的で、当初の計画に加えて抗癌剤を温度感受性リポソームに内包の後にAdSCに取り込ませる方法を試みた。これはリポソーム包合AdSCを適当な温度(42-3℃)で加温することによって、リポソームの性状を変化させて含有している薬剤を放出できるシステムであり、in vitro実験だけでなくin vivo実験においても薬剤放出のタイミングをコントロールできる利点が考えられる。(参考文献:Kono, et al. Biomaterials 31 (2010) 7096e7105)しかしながら、リポソームが細胞に取り込まれた後に温度上昇させるまでもなく約48時間以内に細胞死が確認された。これは、細胞内に存在するライソゾームなどの酵素によってリポソームが分解されたためと推察できる。
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