研究実績の概要 |
本研究課題で最も重要な抗癌剤封入PLGAナノ粒子の作製段階において、当初の予定を変更して温度感受性リポソームをPLGAナノ粒子の代わりに作製し、抗癌剤であるドキソルビシン(DOX)を封入したリポソームを作製した。次に、DOX封入リポソームをヒト由来脂肪幹細胞に抱合させて複合体を作製し、その細胞機能を評価した。 まず、DOXの毒性による脂肪幹細胞自体の細胞死がどの程度の粒子濃度(密度)で細胞に影響を及ぼすかを検討するため、10, 50, 100, 200ug/mLの濃度で細胞に抱合させたところ、最も低い濃度である10ug/mLの濃度で抱合させた細胞でも培養開始後12hで効率にアポトーシス陽性細胞が認められた。これは、リポソームがリン脂質で構成される細胞膜と融合し、抱合段階でリポソーム内部のDOXが速やかに細胞質内に溶出したことに起因する結果と考えられた。 したがって、DOX封入温度感受性リポソームは作製できたものの、このリポソームを脂肪幹細胞を単体としたバイオドラッグデリバリーのためのツールとして利用することは不可能であると判断された。
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