結果:AdSCにPLGAに抗癌剤(ピラルビシン:Pir)を封入した薬剤徐放化ナノ粒子(Pir-PLGA)を抱合させ(AdSC1.0×10^5コに対してPir-PLGA10、25、50μg)、増殖能、アポトシーシスの有無、遊走能の評価を行った。血清存在下では、Pir-PLGAを多く抱合したAdSCほど増殖能の低下を認め、培養開始24時間後にはアポトーシスを起こしていることが示唆された。無血清下では、早期では有意差を認めないが培養開始24時間以降ではPir-PLGAを多く抱合したAdSCほどviabilityの低下を認めた。遊走能については、粒子を抱合しても低下を認めなかった。次に、Pir徐放化ナノ粒子を抱合させたAdSCとヒト膵臓癌細胞株(KP-1N)との共培養を行い48時間後にKP-1Nの増殖能を評価したところ、Pir-PLGAを多く抱合したAdSCが最も増殖抑制するという結果が得られた。
考察・今後の方針 Pirは細胞分裂時に作用するため、血清存在下では早期からAdSCのviabilityに影響を及ぼす反面、Pir-PLGAナノ粒子を多量に抱合したAdSCは癌細胞の増殖を強く抑制した。一方、Pir-PLGAナノ粒子はAdSCに抱合後16時間以内では遊走能に影響を与えなかったため、in vivoにおけるバイオDDSとしてAdSCを利用できることが示唆された。今後はPir徐放化PLGAナノ粒子抱合AdSC移植による抗腫瘍効果について、ヒト膵臓癌細胞株(KP-1N等)皮下移植担癌マウスモデルを用いて検討する。また、PLGAの乳酸とグリコール酸の配合比率を変えることで、封入した薬剤の徐放期間が変化するため、今回in vitroで用いた粒子以外に薬剤徐放期間のさらに長い粒子を作製して実験に用いる予定である。
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