研究課題
基盤研究(C)
肺がん20症例について、それぞれの症例から末梢血サンプルと外科手術材料を得て、制御性T細胞(Treg)の解析を行った。Tregの解析は、Foxp3 low CD45RA+(Fr. I)Foxp3 high CD45RA-(Fr. II)およびFoxp3 low CD45RA-(Fr. III)について解析した。Fr. Iは、resting Treg、Fr. IIは、activated Treg、そしてFr. IIIは、non Tregである。肺がん患者末梢血リンパ球および摘出肺がん組織内浸潤リンパ球(TIL)に含まれるこれらのTreg集団について解析し、次のことが明らかになった。TILでは、末梢血リンパ球に比べて、activated Tregおよびnon Tregの頻度が高いが、resting Tregの頻度は低いまま差はなかった。この結果は、activated Tregおよびnon Tregが末梢血中から腫瘍組織内へ集積していることを示唆している。さらに、腫瘍組織内で、resting Tregの頻度上昇を認めなかったことは、resting Tregからactivated Tregへ変化していることを示唆するものと考えられる。さらに、それぞれの細胞集団について、ケモカイン受容体CCR4の発現を検討した。その結果、TILのactivated Tregおよびnon Tregで、末梢血リンパ球に比べて、CCR4の発現低下を認めた。この結果は、CCR4が関与する遊走によって、activated Tregおよびnon Tregの腫瘍局所への遊走が起こっていることを示唆している。肺がんにおいてケモカインによるactivated Tregの集積が明らかになったが、肺がんの免疫治療戦略を構築する上で重要な示唆を与える知見と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
制御性T細胞の詳細な解析には、FACSを用いた熟練した技術が要求される。研究実績の概要に記したように、CD45RA発現とFoxp3発現により、フラクションI~III(Fr. I~III)を分離して解析し、安定した結果を得ている。研究の初年度の目的は順調に達成している。
本年度の研究によって、肺がんにおけるTregの集積が明らかになったが、今後、Tregの除去とそれによる免疫の増強を検討する。抗ヒトCCR4モノクローナル抗体(KM2760)は、強いADCC活性を有する抗体であるが、この抗体を用いてactivated Tregを除去できるか否かを種々のアッセイ系を用いて検討する。まず、ヒト末梢血リンパ球を用いて、CCR4陽性CD25陽性 Tregを分離・精製し、この細胞集団のケモカインCCL22/MDC濃度勾配による遊走を明らかにする。この反応系に抗CCR4抗体を加え遊走Treg細胞集団を除去できるか否かを検討する。さらに、T細胞反応のTregによる増殖抑制反応が、あらかじめTregを抗CCR4抗体で処理することによって、解除できるか否かを検討する。これらの検討によって、抗CCR4抗体によるTreg除去の機構が明らかになるであろう。これらの事実をもとに、Treg除去による免疫増強をがん治療へ応用するための基盤を構築する。
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