研究課題/領域番号 |
25430161
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
中山 睿一 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (60180428)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺癌 / がん免疫 / 腫瘍内浸潤リンパ球 / 制御性T細胞 / ケモカイン受容体CCR4 / ケモカインCCL22/MDC |
研究実績の概要 |
昨年度は、肺癌患者の癌組織内および末梢血中の制御性T細胞(Treg)を解析して、肺癌組織内では、CD45RA-FoxP3 high 活性化TregおよびCD45RA-FoxP3 low nonTregが末梢血中よりも高い頻度で検出されることを報告した。また、Tregには、ケモカインレセプターCCR4が高発現する。そこで、今年度は、実際に、肺癌組織内にCCR4陽性細胞、さらにそのリガンドであるCCL17/TARC あるいはCCL22/MDCが検出されるか否かを、肺癌組織マイクロアレイ(TMA)を用いて免疫組織染色により検討した。その結果、CCR4陽性肺癌組織浸潤リンパ球は、384サンプル中78個(20.3%)に認められ、一方、CCR4陽性の腫瘍細胞が認められたサンプルは一個のみ(0.3%)であった。さらに、CCL17/TARC陽性浸潤単核球は、5個のサンプル(1.3%)に認められ、また、CCL17/TARC陽性腫瘍細胞が認められたサンプルは2個(0.5%)のみであった。CCL22/MDC陽性浸潤単核球は117個(30.5%)のサンプルに認められ、CCL22/MDC陽性腫瘍細胞を認めたサンプルはなかった。さらに、CCR4陽性のリンパ球はほとんどがCD4陽性で、その内一部はFoxP3陽性であった。CCL22/MDC陽性細胞は、CD163陽性のM2マクロファージであった。CCR4発現は、CCL22/MDC発現と相関していた。 これらの結果は、肺癌組織内では、CCL17/TARCに比べてCCL22/MDCが優位に発現し、その結果として、Tregの集積が起こっていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、制御性T細胞(Treg)をCD45RAとFoxP3発現により3つのフラクションに分け、それぞれのフラクションをフローサイトメトリーにより、正確に検出する測定系を確立した。この方法を用いることにより、肺癌組織内および末梢血中に存在するTregを解析し、活性化Tregが肺癌組織内に集積していることを明らかにした。さらに、TregのケモカインレセプターCCR4の高発現を明らかにした。この事実に基き、本年度は、実際に肺癌組織内にCCR4発現Tregが検出されるか否かを384例の肺癌組織マイクロアレイ(TMA)を用いて免疫組織染色により検討した。また、CCR4のリガンドの検討を行った。その結果、CCR4発現Tregが肺癌組織内に免疫組織染色でも確実に検出できること、さらに癌組織内浸潤Tregは、CCL22/MDCケモカインにより集積していることを示唆する結果を得た。これらの知見は、in vitroでTregの機能を解析するための基礎となる重要な知見である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、1)活性化Tregの肺癌組織内集積、2)活性化TregのCCR4高発現、3)384例の肺癌組織マイクロアレイによる肺癌組織内浸潤CCR4陽性Tregの免疫染色による証明、4)リガンドはCCL22/MDCケモカインであること、などが明らかになった。今後は、活性化Tregの機能の解析を行う。まず、TregのCCL22/MDCケモカインによる遊走を明らかにする。さらに、TregによるT細胞増殖反応の制御を検討する。さらに、抗CCR4抗体を用いて、Treg除去を試みる。これらの知見をもとに固形がん患者に対するCCR4抗体投与医師主導治験症例について解析し、Treg除去と抗腫瘍免疫の増強を明らかにする。
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