研究課題/領域番号 |
25430164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
奥平 桂一郎 国立医薬品食品衛生研究所, 機能生化学部, 室長 (10425671)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乳癌 / エストロゲンレセプター |
研究概要 |
エストロゲン依存性の増殖をする乳癌細胞において、タモキシフェン等でER の機能を阻害すると、ER によって駆動される細胞増殖に重要な遺伝子群の転写が抑制され、細胞周期が停止し、最終的には細胞死に至る。しかし、ER 分解誘導剤による細胞死は比較的短時間で誘導されることから、ER 分解誘導剤が積極的に細胞死のシグナルを起動していることが示唆された。そこで、ER 分解誘導剤依存型細胞死について、細胞死の種類を同定するために、ER 分解誘導剤で処理したMCF-7細胞をギムザ液で染色して細胞の形態観察を行った。無処理の細胞と比較して薬剤処理された群においては、細胞の核画分のみが染色され細胞質がほとんど染まらない細胞の存在が認められた。さらに、アポトーシスを引き起こすスタウロスポリンで処理した細胞、又はネクローシスを引き起こす過酸化水素で処理した細胞と比較したところ、薬剤処理した細胞は過酸化水素で処理した細胞の形態に近いことが分かった。ネクローシスにおいてはクロマチン結合タンパク質であるHMGB1が細胞外に放出されることが知られているため、培養液中にあるHMGB1を測定したところ、ER 分解誘導剤及び過酸化水素によって細胞死を起こした細胞の培地中にHMGB1が存在することを確認した。スタウロスポリンによる細胞死ではHMGB1の放出は起きていなかった。さらに、各種細胞死阻害剤(アポトーシス:z-VAD-FMK, ネクローシス:Necrostatin, オートファジー:3-MA)によるER 分解誘導剤による細胞死に対する影響を観察したが、残念ながらどの化合物でも有為な細胞死抑制効果は認められなかった。阻害剤は効果がなかったが、ギムザ染色による細胞形態観察とHMGB1の放出の結果から、ER 分解誘導剤は乳癌細胞であるMCF-7に、ネクローシス様細胞死を誘導することが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記「研究実績の概要」で述べた通り、ER 分解誘導剤依存型細胞死の解析において、阻害剤による効果は認められなかったものの、形態観察とHMGB1放出より細胞死の種類がネクローシスであることが強く示唆された。25年度中に細胞死の種類を明らかにすることが目標であったので、おおむね当初の計画の通りに進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ER 分解誘導剤依存型細胞死を誘導するメカニズムについて詳細に検討する。ネクローシス様細胞死は活性酸素の過剰産生が引き金になって起こる事が多いため、活性酸素の産生、またはそれ以外の上流因子、シグナル伝達経路とER発現との関連について調べる。また、構想活性相関によりER分解誘導剤の最適化を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入する予定だった数種類の試薬や抗体の譲渡があり、当初の予定より小額になった。 メカニズム研究、構造活性相関研究等に使用される予定である。
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