研究実績の概要 |
静岡がんセンターにて樹立した悪性グリオーマ幹細胞に特異的に発現するYKL-40タンパクに対するヒトモノクローナル抗体をヒト化NOG-IL-4 トランスジェニック(TG)マウスを用いて作製することを目的とする。これまでに通常のNOGマウスを利用して、血液幹細胞を用いたヒト化マウスの構築を行ってきたが、生着に時間がかかる欠点があった。我々は、NOG-IL-4 TGマウスを用いてGVHDを惹起させずにヒト末梢血細胞によりヒト化NOGマウスの構築を行った。組み換えYKL-40タンパクを作製し、末梢血細胞移植後4週目よりヒト化NOG-IL-4 TGマウスに免疫を行った。YKL-40タンパクに対する抗体価増加を確認後1細胞抗体遺伝子クローニング技術(特許取得)を利用して1,000万個のリンパ球より7個のYKL-40に対する抗体産生B細胞を同定した。この中で最終的に4個の抗体遺伝子のクローニングに成功している。サブタイプは、3個はIgMで1個はIgGであった。完全長の抗体タンパクを発現させるため発現ベクターpcDNA3.3にheavy chain由来のcDNA(VH遺伝子)とlight chain由来のcDNA配列(VL遺伝子)をそれぞれ導入し、最終的に抗体遺伝子を293細胞に導入した。培養上清中に分泌された抗体タンパクをアフィニティカラムにて精製を行い、機能解析等に使用した。精製後十分なタンパク量が回収可能であった抗体クローンは3個であった。これらの抗体を用いたYKL-40タンパクに対する結合アッセイ(EIA法)では、反応は特異的であるが、結合活性は弱く、またSPR法でのアフィニティの測定はできなかった。今後、ヒト抗YKL-40抗体のaffinity maturationを目指したファージディスプレイ法での検討を行い抗体の改良を行う方針である。
|