研究課題/領域番号 |
25430169
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂本 尚昭 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00332338)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インスレーター / 反復配列 |
研究概要 |
人工ヌクレアーゼTALENを利用したバリア活性測定系を作製するために、HeLa細胞中のユークロマチン/ヘテロクロマチンの境界部を標的とする人工ヌクレアーゼTALENを作製した。また、TALEN標的部位に挿入するレポーターを作製するために、GFPとRFPをタンデムに連結し、両レポーターの発現がインスレーターのない状態で転写干渉を起こさないことを確認した。 エンハンサー遮断活性をHeLa細胞で測定するために、SV40エンハンサー/プロモーターによるルシフェラーゼ発現系を作製した。解析の過程で、SV40エンハンサー/プロモーター間の距離が近いと正確な活性測定が出来ないことが判明したため、両者の距離を約2kb離すことにより安定な活性測定系を作製した。 Arsインスレーターを含めたHpArs遺伝子上流域の物理的特性を数理的解析により調べたところ、Arsインスレーターの機能的コア領域(ArsInsC領域)は他の領域と比べてDNAの柔軟性が低いとうデータが得られた。さらに、DNAの粗視化モデルによりArsインスレーターの運動性について解析した結果、ArsInsC領域は揺らぎの大きい領域であり、ArsインスレーターからArsInsC領域を欠失させると揺らぎが小さくなることも示された。この揺らぎとエンハンサー遮断活性との間には相関がみられる。 さらに、各種反復配列についてその物理的特性およびインスレーター活性を解析するために、各種反復配列を人工合成してサブクローニングした。その中で、ヌクレオソームを排除する性質を有する(CCGNN)nがエンハンサー遮断活性を示すことを示した。また、類似の配列についても解析したところ、(CCGNN)nと(CCANN)nでは配列が長くなる程エンハンサー遮断活性が強くなる傾向が見られたが、(CAGNN)nに関しては、長さが短い方がエンハンサー遮断活性は強くなっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Arsインスレーターを含めたHpArs遺伝子上流域、同遺伝子のエンハンサーを含めた第1イントロン、タンパク質コード領域について、その物理的特性を解析し、ArsインスレーターのDNAは他の領域と比較して柔軟性が低いことを明らかに出来た。 エンハンサー遮断活性を測定する実験系については、SV40エンハンサー/プロモーターを利用したHeLa細胞による実験系を作製し、さらにエンハンサー/プロモーターの距離による問題点を実験的に明らかにし、その改善にも成功した。この実験系を用いて、各種配列のエンハンサー遮断活性を安定的に測定できるようになった。バリア活性を測定する実験系については、まだ予備実験の段階であるが、順調に進行している。 また、各種反復配列をサブクローニングし、その中でもヌクレオソームを排除する性質をもつ(CCGNN)n配列がエンハンサー遮断活性を示すことを明らかに出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ウニを用いたエンハンサー遮断活性の測定系について、HeLa細胞による実験系に準じた改善を行っていく。バリア活性測定系についても、確立を目指して実験を進めていく。 各種反復配列の解析については、サブクローニングする反復配列の種類を増やすとともに、より長い反復配列のサブクローニングを目指す。とくに(CCGNN)n・(CAGNN)n・(CCANN)nについては、現在18リピート(90塩基対)が最長であり、これまでの結果から、さらに長い配列を用いることにより物理的特性とエンハンサー遮断活性との関連がより顕著になると予想されている。 また、HpArs遺伝子全域の様々な配列について、そのエンハンサー遮断活性を測定し、物理的特性との関連を明らかにしていく。さらに、ウニゲノムやヒトゲノム全域について解析範囲を広げていき、DNAの物理的特性とインスレーター活性との関連を明らかにしていく。 酵母のミニクロモソームを使ったヌクレオソーム形成能の解析についても行っていき、物理的特性・ヌクレオソーム形成能・インスレーター活性の関連を実験的に明らかにしていきたい。
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