バフンウニで同定されたArsインスレーターのコア領域は十分なインスレーター活性を示すにも関わらず、ゲルシフト解析では結合タンパク質が検出されない。そこで、DNAの物理的特性が重要であると考え、ゲノム中に多く存在する各種反復配列の物理的特性およびインスレーター活性を解析することを目的とし、人工合成した各種反復配列の物理的特性を解析した。10種類のトリヌクレオチドリピートの物理的特性を解析するために、ポリアクリルアミドゲル電気泳動による解析を行ったところ、各リピートはそれぞれ異なる挙動を示し、中でもATTリピートの特性がArsインスレーターの物理的特性と類似していることが明らかになった。 また、各種反復配列のヌクレーソーム形成への影響やインスレーター活性を調べるために、それぞれの目的に対するベクターへの各反復配列の挿入を行った。ヌクレオソーム形成への影響を解析するためには、酵母のミニクロモソーム系を用い、TALSベクターへの挿入を行った。また、インスレーター活性の解析には、ウニのSM50プロモーターでドライブされるGFP遺伝子の上流に反復配列を挿入した。解析に関しては、現在進行中である。 さらに、ヒト細胞を用いたChIP-seqのデータを用いて、ヒトゲノム中における各種反復配列のクロマチン構造に及ぼす影響について検討した。その結果、Arsインスレーターと類似の特性をもつATTリピートがヌクレオソームを形成しにくい性質をもつこと、またATTリピートの周辺部には整列したヌクレオソームが配置される傾向があることなどが明らかになった。現在、さらに詳細な解析を行っている。
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