研究課題/領域番号 |
25430171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
塩見 泰史 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (80380567)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | PCNA / Elg1-RFC / PCNAアンローディング / 複製 / 細胞周期 / ゲノム維持 |
研究概要 |
新規なRFC複合体であるElg1-RFCの細胞内における基本機能を明らかにするため、RNAi法によるElg1ノックダウン細胞の解析を行い、以下の結果を得た。 1) 対照細胞と比較して、複製(S)期におけるクロマチン結合したPCNA量が過剰になることがウエスタン法、免疫染色法で明らかになった。DNA合成のマーカーとなるBrdUの取り込みとPCNAの共染色では、DNA合成が行われている部位以外でもPCNAがクロマチン結合していることが示された。 2) S期の進行が遅延するがチェックポイント機構は応答しておらず、クロマチン結合した過剰なPCNAが細胞周期進行を阻害していることが示唆された。また、通常はS期後のG2期ではPCNAはクロマチンから除去されるが、ノックダウン細胞ではPCNAはクロマチンに結合したままであることが示された。 3) 過剰にクロマチン結合したPCNAが他のクロマチン結合因子に与える影響を解析した結果、ヒストンH3やセントロメアタンパク質CENPAなどクロマチンの基本構造形成に関わる因子には影響がなかったが、コヒーシンサブユニットSMC3、クロマチンリモデリング因子SNF2H、ヘテロクロマチン形成因子HP1αなど、高次の染色体構造形成に関わる因子のクロマチン集合が阻害されることが示された。 4) 間期におけるクロマチン構造を核Halo標本、分裂期での染色体構造をM期核標本を作製して解析した。その結果、ノックダウン細胞では間期核におけるクロマチン構造が緩んだ状態になっており、M期核標本では断裂や崩壊していることを示す染色体が多数見られた。 以上より、Elg1-RFCはS期においてクロマチン結合したPCNAをDNA複製終了後に特異的にアンロードすることで、複製と連係した安定な細胞周期の進行や高次染色体構造の形成とゲノム維持に寄与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Elg1ノックダウン細胞による解析で、Elg1-RFCが特異的に示すPCNAアンローディング活性と、その機能が欠損した場合の細胞周期進行、クロマチン結合因子、高次染色体構造形成への影響を明らかにすることができた。これらの成果は、当初の研究計画通りに得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、当初の計画通りに細胞内在性Elg1を検出できる抗Elg1抗体や、組換えElg1-RFCの発現系を作製することができた。今後はこれらを用いて細胞内Elg1-RFCの挙動の解析、精製Elg1-RFCを用いてPCNAアンロード活性を直接的に示す解析を進めていく。また、DNA損傷修復後のPCNAアンロードにもElg1-RFCが関与しているのかについても解析を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
他の民間助成金から支出を行ったため、当該年度の研究費の一部を次年度使用とした。 研究の進展につき、新規の物品購入、学会等への旅費として使用する。
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