研究課題
環境に応じたエネルギー代謝の可塑性を生み出すエピジェネティクス機構を解明することを目的として、ヒストン脱メチル化酵素LSD1の機能解析に取り組んだ。H.27年度は、LSD1による骨格筋代謝制御のエピジェネティクス機構について検討した。骨格筋は、運動持久性が高くミトコンドリア呼吸によるエネルギー産生が活発な遅筋線維と強度が高く解糖系に特化したエネルギー合成を行う速筋線維によって構成される。両者は運動、栄養、ホルモン等の外的刺激に応じて変化する可能性が示されており、エピジェネティックな可塑性によって制御されていることが示唆されるが、その分子機序はわかっていない。そこで、この点を解明する目的で、LSD1の骨格筋線維形成と代謝型形成における役割を検討した。マウス骨格筋由来C2C12筋芽細胞の分化過程において、LSD1阻害剤S2101処理したところ、ミトコンドリア好気呼吸及び遅筋線維関連遺伝子が発現上昇を示した。これらの遺伝子座において、LSD1の脱メチル化標的であるメチル化ヒストンH3K4がLSD1阻害により亢進していた。また、LSD1阻害下で細胞内代謝を計測したところ、好気呼吸の活性化及びグルコース依存性ATP産生の低下が認められた。これらのことから、LSD1は、遅筋線維形成・好気的代謝をエピジェネティックに抑制することで、速筋線維形成と解糖系シフトを統合的に促進していることが示唆された。次にLSD1による筋線維・代謝遺伝子制御がどのような環境因子によって規定されるかを検討した結果、LSD1のタンパク質発現量が代謝ホルモン刺激によって変動することがわかった。これらのことから、LSD1は、生体内の栄養・代謝環境に応答して速筋線維形成をエピジェネティックに誘導することが示唆された。
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