研究課題
本研究では臨床所見に基づいて収集された特徴ある遺伝性癌症例のゲノム解析を行うことによりその発癌原因遺伝子異常を同定し、それを起点にした癌診断法の開発や発症・進行機序の理解を深めることを目指している。平成26年度は下記の3点を行った。1.遺伝性が疑われるが詳しい家系情報を得ることができない場合、実験的に血縁症例間の遺伝的な関係の程度をゲノム中のホモ接合領域の探索から知ることができる。最近イタリアのグループによりエキソームシーケンスデータのみを使いホモ接合領域を検出する方法(H3M2法)が開発されたので、我々の症例を使ってその方法の有用性の確認と解析フローの構築を行った。2.これまでに家系内で複数人肉腫を有する症例を2家系収集した。そのうち1家系の母子症例のエキソームを行った。シーケンスリード数を使ったエキソン領域のコピー数解析では疾患の原因と疑われるような異常は検出されなかった。母子で共通かつ、ヒト多型データベースに無いアミノ酸変化を伴う変異は301個検出された。そのうちの18個は体細胞変異データベースCOSMICに登録されているものであった。3.症例のゲノム解析と並行して、癌バイオマーカー開発に必要な、血液中や癌組織中に微量に含まれる癌細胞由来の変異DNA配列を高精度で検出する方法の開発を昨年に引き続き行った。次世代シーケンサーを使った解析では、その高い読み取りエラー率による偽陽性が微量変異検出の障害になっていた。そこで、バーコード配列タグを使ったDNA分子高精度シーケンシングによる癌患者血漿DNA中の突然変異検出システムを開発した。この方法は偽陽性を抑え、血中微量突然変異の絶対定量的なde novo 検出を可能にする。
3: やや遅れている
肉腫症例のエキソーム解析では発癌の原因として強く疑われるような配列異常が見つからなかった。また、全ゲノムシーケンス解析を予定していたが、使用機器メーカーからの試薬及び消耗品開発が予定を大幅に遅れているため、実行できなかった。
未解析の症例についてエキソームシーケンスを行う。全ゲノムシーケンスについては、使用機器で解析環境が整い次第行う。発癌原因候補異常の絞り込みには、大規模癌ゲノム研究(国際癌ゲノムコンソーシウムなど)から公開されつつある情報の利用や、配列機能予測法による解析を行う。また、癌バイオマーカー開発に必要な高精度微量変異検出法の開発を推進する。特に多領域同時解析を可能にするように改良する。
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British Journal of Cancer
巻: 112 ページ: 352-356
10.1038/bjc.2014.609