研究課題/領域番号 |
25430181
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 明弘 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (60301149)
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研究分担者 |
宮下 哲典 新潟大学, 脳研究所, 助教 (60323995) [辞退]
桑野 良三 新潟大学, 脳研究所, フェロー (20111734)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / コピー数変異 / マイクロアレイ |
研究実績の概要 |
初年度に構築した日本人コピー数変異(CNV)のマスターDB(約2,400検体)から集団内および家系内での変異頻度を集計して疾患との関連性の解析を進めた。前年度のEOAD(早期発症型検体群)に加えて、LOAD(晩期発症型検体群)、CTRL(健常検体群)、ASP(罹患同胞対検体群)の集団内でCNVの頻度情報の抽出を行った。これら4検体群およびHapMap検体群での変異のゲノムワイドな分布と特定の染色体領域での分布を検証するために、データを可視化するソフトウェアを作成した。その上で、AlzGene/PDGeneやJFADdbの神経性疾患関連データベースを用いて既知の疾患関連遺伝子との関連性を調べた。非血縁検体群(EOAD,LOAD,CTRL)での疾患対照比較によって特定の疾患検体群に特異的な変異領域を検出し、さらに、血縁検体群(ASP)での変異状態を確認した。その結果に基づいて、上記のデータベースから得られた既知の疾患関連遺伝子ごとの変異情報をリスト化した。そこには、稀少変異(集団内頻度1%以下)を含む変異領域の情報が含まれている。変異の集団内頻度が低いとしても、日本人全体での実際の変異保有者数は数十万規模となるため、単一ないし少数の因子のみで疾患を説明できないことを鑑みれば、個々の説明力は稀少であるとしても複数の変異の効果を積み上げていくことは重要である。コピー数変異の領域サイズはさまざまであり、また、必ずしも遺伝子に対応する領域とは一致しない。その中で、既知疾患遺伝子の転写領域内で非血縁疾患検体に一定頻度以上で特有に存在する変異に注目して解析を進めた。実際にそのような変異がアルツハイマー病との関連が知られる遺伝子の領域内に存在し、その領域内での変異の範囲が複数の検体間で共通しているデータ例が見いだされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当年度に予定していたソフトウェアおよびデータベースの開発項目は全て順調に完了した。また、個別の疾患関連遺伝子や特定の検体に関する検証も行って、定型的なデータ処理のみではない検討も実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在の検体群は発症年齢に従って分類されているが(早期型発症検体群、晩期型発症検体群、健常検体群)、上項で述べた通り同一の検体群内で変異のパタンが共通している訳ではない。そのため、検体の変異パタンに従って検体群のサブタイプ化(検体群のより詳細な分割)を行って、疾患と変異の間の関係を解析する。そのために、検体および変異のクラスタリングのためのソフトウェアを作成する。また、クラスタリングの結果を加味しつつ関連解析を実施できるソフトウェアを作成する。これらのソフトウェアを用いて、前年度までに整備した検体群ごとの変異データ内に潜在する疾患と変異の関係を俯瞰的に視覚化する。対象データは、検体数およびマーカ数とも網羅的な情報を含んでいるが(2,400検体×180万マーカ)、その一方で、大量の個別データとして存在しているのみで必ずしも構造化された情報としては構成されていない。そのため、個別の検体や上記のサブタイプ、或いは、特定の遺伝子に関する知見として程良い解像度で言語化した知見や視覚的なダイアグラムとして疾患関連の変異の情報を要約する。それに向けて、論文補遺に収載されるタブ区切りデータを入力として解析を実行できるGUI付きソフトウェアも整備する。これまでに進めている疾患関連文献データベースに加えて、相補的に実施している染色体高次構造解析の結果も検討しつつ、これまでに作成した網羅的な変異データベースから疾患関連の情報を抽出して知識ベースを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表のための学会参加料および旅費が予定を下回ったため、及び、データ処理の全てを研究代表者が自ら実施することができたことにより外部委託費用分を軽減できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に実施するソフトウェア開発に必要となる計算機周辺機器の整備に用いる。
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