研究課題
基盤研究(C)
本研究では、申請者がこれまでに開発した創薬プロセス初期における探索研究を支援する統合データウェアハウスTargetMineと、個々のタンパク質の機能や相互作用を予測する方法を統合し、可能な限りインシリコで創薬ターゲット及びバイオマーカーの探索を行なう次世代創薬支援システムプロトタイプの構築を目的としている。本年度はまず、TargetMineにプログラム的にアクセスできるソフトウェアと可視化の枠組みを確立し、今後の統合の基礎とした。また、TargetMine中のタンパク質間相互作用(protein-protein interaction; PPI)データに品質評価を施して高信頼度のPPIネットワークを構築し、ネットワークに関する論理的な属性に基づいて候補タンパク質の重要性を評価できる機能を導入した(Tripathiら、J. Proteome Res. 2013)。さらに、医薬品と類似の特徴を備えた低分子化合物が結合し得るポケットがタンパク質構造の表面に存在するかどうかに基づく指標(druggability)や、それをPPIの阻害に拡張した指標についても取り込むことで、より実用的なターゲット候補タンパク質の優先順位付けが可能になった。一方で、統合対象の一つであるタンパク質機能予測法の整備を行い、アミノ酸配列のみから酵素の詳細な機能分類(EC番号4桁)を同定する方法を開発した(Nagaoら、PLoS ONE 2014)。
1: 当初の計画以上に進展している
25年度に予定した計画のうち、TargetMineと外部プログラムとのやりとりを可能にするソフトウェアの開発は完了し、予定には入れていなかった可視化やクラスタリングの機能についても導入できた(論文投稿中)。さらに、26年度に予定していたdruggabilityやネットワークの論理的属性についての導入も既に達成した。一方、アミノ酸配列のみからタンパク質間相互作用を予測する方法PSOPIAの拡張については、投稿論文査読者より指摘された対応に予定以上に時間がかかったため、次年度も引き続いての実施を計画する。
2つのアミノ酸配列が与えられたときに、それらが相互作用するかどうかを予測する方法PSOPIAを拡張し、与えられた1つのタンパク質と相互作用する可能性の高いタンパク質をデータベース中からすべて抽出する方法を開発する。これを全てのヒトタンパク質について予め計算しておいてTargetMine中に格納するか、あるいはオンデマンドで予測を行なうかを検討し、これまでに開発したソフトウェアフレームワークを用いて、TargetMineとの統合を行なう。さらに、タンパク質機能予測、druggability、ネッワーク属性、可視化などすでに開発した要素技術を組み合わせて、創薬ターゲットやバイオマーカー探索のワークフローの形に統合したシステムを構築する。このシステムを呼吸器疾患モデル動物、自然免疫活性化シグナル伝達経路など、申請者が現在関わっている具体的な実験データ解析に応用する。
現有のコンピュータシステムで当該年度の研究目的を達成できることが明らかになり、当初予定していたコンピュータ購入と作業委託費が未使用となったため。当該年度の成果に基づき、次年度は各種アルゴリズムのベンチマークなど、より大きな計算処理能力が必要になると考えられるため、上記の未使用額を加えることで計算サーバ1台(HP社製DL360p G8)の購入を計画している。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
PloS One
巻: 9 ページ: e84623
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http://mizuguchilab.org/research