研究課題/領域番号 |
25430191
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
片山 寛則 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50294202)
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研究分担者 |
植松 千代美 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (30232789)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 沙梨 / 遺伝的多様性 / 保全 / 中国中部 / 集団構造解析 / SSRマーカー / 花・果実形質 / 秋子梨 |
研究実績の概要 |
ニホンナシと同種であり、これまでに発見情報がある中国中部の山脈における沙梨(Pyrus pyrifolia)の野生集団の探索を行った。山脈の南北に分かれる6集団、58個体の果実形態8形質、花器形態4形質の計測、DNA (葉緑体SSR, 核SSR)の集団構造解析を行い、沙梨、白梨、秋子梨の栽培・在来品種と比較した。果実、花器の形態形質の分析、DNA分析は中国国内にて行われた。得られたデータは神戸大学にて集団レベルで解析された。マメナシ(棠梨)の自生個体はどこでも非常に多く見つかったが、沙梨と思われる自生個体は少なかった。また沙梨が集団で自生している(天然更新をしている)場所は見つからなかった。ほとんどの個体は独立して民家、畑の周辺などで見つかった。果実形態では室数は2室から5室まで多様だった。中間の3室の果実もあり、マメナシと5室の梨との雑種と推測された。花器、果実形質データを主成分分析(PCA)した結果、山脈の南北集団で差異が見られた。多くの南部集団では果実、花器は共に大きく、沙梨栽培品種またはその逸失個体の可能性が高い。またDNAによる集団レベルの系統解析からも南北集団間は遺伝的に遠縁であり、地理的に隔離されていると予想された。これらの結果から今回の探索地である中国中部の山脈には沙梨の自生地はすでに消失したか、もともと無かった可能性が高い。今後は本研究助成により明らかになった中国北部に自生する秋子梨と日本の東北地方に自生するイワテヤマナシとの関連性を明らかにしたい。なお、これらの探索、DNA分析は中国国内の法規を遵守し、中国人研究者との共同研究として遂行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の中国東北部に自生する秋子梨については黒竜江省牡丹江市周辺の探索調査を終えて約20個体の秋子梨のサンプリングを行った。結果として秋子梨の8集団(内モンゴル、黒竜江省、吉林省)を用いて花器形態とDNAマーカーによる集団構造解析を行った。花器形態は明確な地理的変異が見られ、花器形態と集団構造解析から黒竜江省の2集団が多様性の中心であることを推定した。また内モンゴル集団では多様性が小さく、砂漠化などにより絶滅の危険性が高まっており保全が急務であることを2編の国際誌(うち1編は印刷中)にて報告した。秋子梨についてはおおむね順調に研究が進展しているが、昨年度探索した沙梨については期待された中国中部の山脈に現存した梨は生息環境、形態形質、DNA分析からみても沙梨栽培品種の逸出個体か、在来品種であり、野生種の可能性は低かった。これまで中国国内で沙梨の野生個体はほとんど見つかっておらず、すでに消失した可能性も高い。
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今後の研究の推進方策 |
これまで中国東北部に自生する秋子梨について集団構造解析による保全単位の決定、遺伝子移入の存在、起源地の推測、遺伝的多様度からみた集団の特徴づけを行った。最終年度では秋子梨と同種(Pyrus ussuriensis)であり、これまで研究データの蓄積があり日本に自生するイワテヤマナシとの関係性を集団遺伝学レベルで解明する。この結果、イワテヤマナシの起源やその伝播経路を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入で端数が残金として残ってしまいました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品費で使用する。
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