研究課題/領域番号 |
25430191
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
片山 寛則 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50294202)
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研究分担者 |
植松 千代美 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (30232789)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 秋子ナシ / Pyrus ussuriensis / イワテヤマナシ / 集団構造解析 / 起源 / 遺伝的多様性 / 保全 / 保全単位 |
研究実績の概要 |
最終年度は本研究において明らかとなった中国北東部に分布する秋子ナシ野生個体(Pyrus ussuriensis Maxim.)と日本の東北地方に自生するイワテヤマナシを用いて集団レベルの遺伝的多様性、集団構造解析、類縁関係を調査し、イワテヤマナシの起源について考察することを目的とした。秋子ナシ野生個体の13集団153個体およびイワテヤマナシの14集団274個体の合計27集団について20種類の核SSRマーカーを用いてアリル多型を検出し、遺伝的多様性の算出、STRUCTURE解析、系統樹を作成した。中国の秋子ナシ野生個体の集団内の遺伝的多様性はイワテヤマナシのそれよりも低いことが明らかとなった。またマメナシ、リンゴや多くの他殖性植物と比べても秋子ナシ野生個体の集団内の遺伝的多様性の低さが際立っていた。見出された遺伝的変異が、集団間、集団内のそれぞれにどの程度見られるのかAMOVAを行った結果、集団間の遺伝的分化の程度は秋子ナシ野生個体で20.05%を示しており、イワテヤマナシ(7.20%)や、砂梨、マメナシ、ヒマラヤナシや他の他殖性樹木と比べて高かった。秋子ナシ野生個体は集団間での遺伝子流動が少なく各集団で遺伝的に分化していることを示唆した。STRUCTURE解析では中国の秋子ナシ野生個体とイワテヤマナシは異なる遺伝構造を示した。また系統関係も両者は遠縁だった。これらの結果から秋子ナシとイワテヤマナシは地殻変動により日本海が生じた鮮新世と更新世の間に分断された可能性がある。 本課題の遂行により中国の秋子ナシ野性個体の保全の必要性が確認され保全単位を設定した。しかしイワテヤマナシおよび秋子ナシ野生個体の起源はいまだ不明のままである。今後は人的影響が少ないと考えられるロシアのシベリア、沿海州地域に自生するPyrus ussuriensisの探索と遺伝的な特徴づけ、秋子ナシやイワテヤマナシとの関係の解明が必要であろう。
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