本研究の最終年度である本年度は、オナガドリのES細胞の樹立および凍結保存を目的とし、実験を実施した。 実験1では、ニワトリLIF(chLIF)を添加した培地で、オナガドリの胚盤葉細胞を培養した結果、初期段階においては未分化の状態が維持されたが、継代培養につれて、分化形態である嚢胞性胚様体が出現した後、徐々に死滅した。実験2では、chLIF、阻害剤であるY-27632およびU0126を添加した培地でオナガドリの胚盤葉細胞を培養した結果、培養した胚盤葉細胞の増殖が良好となり、コロニーを形成し(ES細胞形成)、さらに長期・安定的な培養ができた。実験3では、chLIF、Y-27632およびU0126添加した培地を用い、37日まで培養したオナガドリの細胞を凍結保存した。凍結用保存液には、セルバンカーを用い、4日間凍結保存を行った。融解した細胞を再培養した結果、ほとんどの細胞が生存し、細胞増殖も良好であり、コロニー形成能も保持されていた。実験4では、20世代継代培養した細胞(43日間継代培養)および凍結融解後の細胞を用いて、多能性マーカーNanogと生殖系列マーカーVasaの免疫染色を行った。その結果、継代培養した細胞および凍結融解後の細胞にNanogおよびVasa陽性反応が認められた。 これらの結果より、chLIFと阻害剤Y-27632、U0126を添加した培地を用いる方法は、オナガドリなどの希少家禽のES細胞の樹立に有効な方法であると考えられた。また、長期継代培養したES細胞は多能性と増殖性を維持していると考えられた。さらに、凍結保存後のES細胞にコロニー形成能が保持されたことから、本実験におけるES細胞の凍結保存方法は、有効な方法であると考えられた。
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