研究課題/領域番号 |
25430195
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
三宅 裕志 北里大学, 水産学部, 講師 (00373465)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱水性生物 / ハオリムシ / 幼生分散 / リポフスシン / 年齢 / 個体群解析 |
研究概要 |
マリアナ海域における熱水性幼生分散に関する研究のための調査航海が得られなかったため、航海に先立って事前に実験手法の確立と予備調査を行った。 まず、マリアナ海域で確認されるサツマハオリムシの採集を鹿児島湾にて行った。サツマハオリムシは生物採集グラバーをもちいて採集した。採集された場所ごとの集団でリポフスシン量と遺伝子のCOI領域を解析した。その結果、リポフスシンは同じ採集場所から得られた個体群はほぼリポフスシン量がそろっており、様々な場所から集団から得られたものでは、リポフスシン量にばらつきが見られた。このことから、同じ場所にいる個体はほぼ同じ年齢の個体が集まっていることが示唆された。さらにCOI遺伝子を解析したが、解析できた個体数が少なく、まだ年齢と個体群の関係は明らかに出来ていない。 また、ハオリムシの着底の条件をバクテリア相が関係していると仮定し、ハオリムシ類の飼育水槽および鹿児島で採集された際に得られた底質の泥からバクテリアとアーキアのクローン解析を行った。チューブワームが飼育されている水槽からは、γプロテオバクテリアに属するチューブワーム共生細菌の存在が確認された。バクテリアでは底泥サンプルからイオウ酸化細菌(SOx)の存在が確認された。アーキアについては、底泥サンプルの特に嫌気層において大量の嫌気的メタン酸化菌(ANME-3)グループの存在を確認した。 さらに、熱水性ゴカイの分類のために過去に採集されたサンプルを整理してリストアップした。また、ニシノシマホウキガニが伊豆大島の南側の大室だしで採集されており、それらを飼育していたことから、ニシノシマホウキガニの遺伝子解析を行った。その結果、大室ダシにはニシノシマホウキガニと台湾に生息するニシノシマホウキガニの近縁種が含まれている可能性が見られ、黒潮にのって分散してきている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、鹿児島湾でのサツマハオリムシの採集をリブリーザーを用いた潜水で採集することを考えていたが、安全面から潜水採集を中止した。その後、サツマハオリムシの採集について模索していたところ、過去に作成した、鹿児島水族館所有の深海生物採集グラバーがあり、これまで機器不調で使用されていなかったが、その深海生物グラバーが使用可能となったことがわかった。これにより、ようやく12月中旬および1月中旬の2回、サツマハオリムシの採集を行うことが出来た。サンプル数が少なかったが、リポフスシンの抽出に成功した。その結果、個体群のまとまりごとにリポフスシンの量がまとまっており、リポフスシンによる年齢解析が出来る可能性を見いだせた。しかし、遺伝子解析でのDNA抽出およびCOI塩基解析がうまくいかず、個体群解析するだけの情報を得ることが出来なかった。また、今回はサツマハオリムシ採集の際にプランクトンネットやCTD観測をすることが出来ず、幼生分散と海流の関係に関する結果を全く得ることが出来なかった。ニシノシマホウキガニに関しては、飼育がうまくいかずに死亡してしまい、成長を追跡することが出来なかった。しかし、死亡個体を用いて遺伝子解析をしたところ、台湾に生息するニシノシマホウキガニの1種の遺伝子と一致した個体が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度も航海が得られなかったため、27年度の航海は確実に行えるようにマリアナ海域での深海調査に関連する研究者者チームを組み、深海調査航海の獲得に全力を注ぐ。 26年度は、実験室で出来うる範囲のことを全て行う。サツマハオリムシにてリポフスシンを用いた年齢査定が出来る可能性が見えたため、大体の年齢が推定できる飼育個体を用いてリポフスシンの解析を行い、年齢解析手法を確立する。また、DNA解析に関しては精度を上げて解析し、COIだけでなく、16S、ITS遺伝子の解析を行う。また、個体数がすくなかったため、採集回数を多くするようにして、様々な場所におけるサンプルと同じ採集場所からのサンプルと比較して、年齢を考慮した集団解析を行う。また、サツマハオリムシの幼生を得て、幼生の着生と変態に関するバクテリアの影響を調べる。 幼生の着生と変態に関して、光環境への適応も考えられるため、甲殻類幼生の光受容器に関する生理学的実験を進める。材料として、生きた生物が必要となるため、比較的入手しやすい深海性甲殻類であるオオグソクムシを用いて実験を行う。また、ニシノシマホウキガニに関しては、採集が可能な鹿児島県での採集を行い、サンプルの確保を行い、ニシノシマホウキガニおよび台湾におけるニシノシマホウキガニの1種の形態、遺伝的な精査を行いたい。
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