研究課題
マリアナ海域の調査航海を得ることができず、鹿児島大学とかごしま水族館の協力を得て、サツマハオリムシの採集を行った。また、海洋研究開発機構の「なつしま」NT15-14航海で得られたタギリカクレエビを新江ノ島水族館で飼育中に幼生が得られた。また鹿児島大学「南星丸」によって採集されたタギリカクレエビからも幼生が得られた。さらに、飼育環境における熱水生物の幼生の着生に関するバクテリア相の解析を進めた。サツマハオリムシのリポフスシンおよびCOI遺伝子解析の個体数を233個体まで増やし、年齢とハプロタイプを加味した個体群解析をおこなった。その結果、同じ様なサイズ頻度分布を持つ個体群であっても、年齢構成が全く異なった。さらにハプロタイプをみると、古くから加入している個体や新しく加入した個体を認めることができ、新たな観点から個体群動態の研究ができるようになった。しかし、沈設した時期の分かっている鯨骨に付着したサツマハオリムシを得ることが出来なかったため、リポフスシンによる絶対的な齢指標を算出することが出来ず、相対的な齢指標にとどまってしまった。また、タギリカクレエビ幼生に関しては、ふ化後約1ヶ月間のデータが得られたが、着底にまでは至らなかった。人工化学合成生態系水槽の微生物相の解析については、水槽底泥中に、バクテリアでは、硫化水素の供給に必須であると考えられる硫酸還元菌群(SRB)とイオウ酸化細菌群が確認された。アーキアでは低温環境に適応したメタン菌群が優占していた。また嫌気的メタン酸化の役割を担う可能性がある微生物群(ANME)が見い出され、ANMEとSRBによる硫酸還元コンソーシアムで硫化水素の供給を行う微生物系の存在が示唆された。またこれらの微生物群集構造は、深海の鯨骨直下の堆積物中でのものと類似していた。これは、水槽内の環境が有機物由来の化学合成生態系に近いことを示唆している。
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JAMSTEC Report of Research and Development
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