本研究は、サンゴ礁崩壊の過度的現象として、藻類や細菌類(シアノバクテリアを含む)がサンゴ類へ波状的に攻撃しつつある現象を記載し、また実験的に再現・検証を行い、最終的にサンゴ礁の保全に繋げることを目的として実施した。平成27年度に実施した研究実績の概要は次の通りである。1.平成26年に宮崎県で大規模に発生したホワイトシンドロームについて論文を発表した。また、27年度は細菌を採取し、16SrRNAをプライマーとして次世代シーケンサ(MiSeq)を用いて細菌叢の網羅的解析を行った。その結果、当初予想していた原因菌と想定されるビブリオ菌の割合は少なかった。ホワイトシンドロームの北限にあたる和歌山県串本のホワイトシンドロームも採取し、同様の解析を今後行い比較する予定である。2.シアノバクテリアを主とする病気のブラックバンド病(BBD)の分布域を調査した結果、人の影響のない離礁(伊是名沖および瀬底島沖)でも確認した。また、水温の低下に伴って発症率は低下するものの、真冬の2月にもわずかながら存在することを明らかにした。冬場に採取したDNAサンプルを夏場の同じ群体で今後あわせて解析する。2.の調査においてBBDに犯された後のサンゴ骨格に蛍光性日輪が形成されることを発見した。この物質は酸、アルカリ、有機溶媒で分解されない安定な物質であり、530nmに蛍光のピークがあることを明らかにした。光合成の行われる朝方に形成されることからシアノバクテリアが関与すると考えられる。
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