研究課題/領域番号 |
25430199
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
高倉 耕一 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (50332440)
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研究分担者 |
内貴 章世 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (30393200)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 繁殖干渉 / 訪花昆虫 / アロザイム分析 / 自家受粉率 |
研究実績の概要 |
ホトケノザが近縁外来種から受ける繁殖干渉について、人工授粉実験による検証を行った。主に結実率に注目した過去の検証では繁殖干渉を検出するに至っていなかったが、本年度は発芽率も測定したところ、混合花粉での受粉によって形成された種子では有意に発芽率が低いことが明らかになった。このことは、近縁外来種からの繁殖干渉が選択圧となって、ホトケノザにおける閉鎖か頻度が増大したという当初の仮説を支持するものである。 また、ホトケノザにおける送粉昆虫相についての調査を近畿地方から九州地方にかけての地域で行った。本種に訪花する昆虫相はほとんどの調査地において乏しかったが、ごく一部の調査地ではケブカハナバチがきわめて頻繁に訪花していた。ケブカハナバチは古い土塀などに営巣し、かつては日本各地に豊富に生息していたと考えられるハナバチの一種である。ケブカハナバチが多いことが本研究で明らかになった調査地でも、近傍に古い民家が残されており、その土塀で多くのケブカハナバチが営巣していた。他の調査地周辺ではそのような環境はほとんど残っていないことから、近年の家屋環境の変化によりホトケノザの主要な訪花者であるケブカハナバチが激減したことが示唆された。 昨年度までの研究で、閉鎖花が多い集団や訪花者が少ない集団でホトケノザの自家受粉率がきわめて高いことが明らかになっていた。本年度の研究では、ケブカハナバチがきわめて頻繁に訪花している上記の調査地の集団について、アロザイム分析により自家受粉率を推定することを試みた。しかし、アロザイムの多型が一切なかったため、自家受粉率を推定することができなかった。上記集団は、瀬戸内海に浮かぶ離島の小集落に位置していることから、他集団との遺伝的交流も乏しく、かつ有効集団サイズも小さいために、遺伝的な多様性がもともときわめて乏しいことが原因であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した調査項目のほとんどにおいて、結果が得られている。アロザイム分析による自家受粉率の推定については多型が全く見られないことから実施できなかったが、これは当該集団の特性によるものである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査により、送粉昆虫相が多いホトケノザ集団は現在ではすでに希少であることが明らかになったことから、送粉昆虫相の豊かさと自家受粉率の関係を検証することは諦め、近縁外来種のヒメオドリコソウとの関係のみに注力する。九州においてヒメオドリコソウが侵入・定着していない地域のサンプルを既に採集していることから、この分析を今後進める。 また、ヒメオドリコソウの侵入・定着とホトケノザ閉鎖花の頻度について調査を行った集団については、ホトケノザの乾燥標本を収集している。これを用いて今後うどんこ病菌の寄生率を集団ごとに調べる予定である。まず、うどんこ病菌の核DNA・ITS領域をターゲットとしてPCRによって検出するプライマーセットを設計し、その有効性を検証した後、収集サンプルについて検出を試みる。 さらにこれまでの成果をまとめ学会発表等で公表するとともに、論文化の作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象とした調査地が予定よりも近い地域に偏ったことから旅費の使用実績が少なくなったことに加え、うどんこ病菌の検出実験を今年度に集中して行うことにしたため消耗品の使用が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には遠方での野外調査を行うことから、今年度に比較して多くの旅費を支出する予定である。また、うどんこ病菌検出のための作業も本年度に集中して行うことにしたため、それに必要な消耗品や試薬を多く購入する予定である。
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