研究課題
本研究は、生物種を超えて保存されるcyclin B1 mRNAの翻訳制御について、その分子機構と個体形成・生殖細胞形成における役割の解明を目的とする。平成27年度において、cyclin B1 mRNAのシス配列に特異的に結合し翻訳の制御にかかわるPumilio1蛋白質の解析と、BACを用いたcyclin B1翻訳機構の可視化を実施した。本年度において次の成果が得られた。1)ゼブラフィッシュとマウス卵母細胞が成熟する過程において、Pumilio1はリン酸化を受ける。2)リン酸化は成熟開始後の非常に早い時期に始まり、これはcyclin B1のRNA顆粒の拡散、及び翻訳の開始に先立つ。3)マウス卵母細胞で発現したGFP融合Pumilio1は凝集体を形成する。4)この凝集体は成熟過程で拡散し、その時期は内在のPumilio1がリン酸化を受ける時期と一致する。これらの結果は、cyclin B1 mRNAの翻訳制御にPumilio1の凝集化とリン酸化による凝集体の拡散が関わることを示唆し、本研究分野に全く新しい知見をもたらした。今後、Pumilio1凝集体形成の分子機構とその役割を解析することで、卵形成と個体形成における翻訳制御の仕組みと役割が明らかになると期待される。本年度において、翻訳の過程をリアルタイムで解析するためcyclin B1遺伝子を含むBACを改変し、ゼブラフィッシュゲノムに挿入することに成功した。本研究で作製したアクチン繊維を可視化するトランスジェニック・フィッシュ、及び、翻訳を可視化するトランスジェニック・フィッシュは生化学的解析では実現できない翻訳制御機構の解明に大きく貢献すると期待される。
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Cytoskeleton
巻: 72 ページ: 491-501
10.1002/cm.21253