研究課題/領域番号 |
25440002
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
牛田 千里 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (50250593)
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研究分担者 |
武藤 あきら 弘前大学, 農学生命科学部, 研究員 (80034635)
姫野 俵太 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (80208785)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 受精異常 / 精子形成 / 胚発生 / 卵形成 / 減数分裂 / 核小体RNA / 線虫 / リボソーム |
研究実績の概要 |
本研究では線虫の新規変異株MT16939の精子形成異常について、原因遺伝子を同定し、その遺伝子の変異がなぜ精子形成異常を引き起こすのか明らかにすることを目的とする。異常の原因としてT26A8.2の3’ UTRの欠損、cer-2aの欠失、T26A8.4の3’ UTRの欠損の3つが想定された。平成25年度、26年度において、cer-2aの欠失が原因である可能性の低いことを示し、残る2つについて検討するための準備を行った。平成27年度はまずT26A8.2について検討した。T26A8.2は変異株における発現が野生株よりも上昇している。そこで野生株でT26A8.2を高発現する株を作製し、その精子形成への影響を調べた。その結果、精子形成に変化は見られず、これが原因遺伝子である可能性は低いとの判断に至った。T26A8.4については多コピー数の目的遺伝子が導入されるような方法では変異株で発現しないことがわかったので、この遺伝子1コピーのみをゲノムに組み込む方法(MoSCIシステム)を採用し発現を試みた。しかし、この方法でも導入したT26A8.4の発現は見られなかった。現在、別の方法を試している。 本研究を進めていく過程で、MT16939が精子形成異常とは別に胚発生異常を示すことが明らかとなり、この点についても検討を加えることとした。現時点でT26A8.2の3’ UTRの欠損が原因である可能性は低いとの結果を得ている。 平成27年度にはまた実施最終年度に予定していた変異体リボソームの解析を前倒しで行った。その結果、MT16939では40Sサブユニットに対する60Sサブユニットの量的な割合が野生株よりも低くなることを明らかにした。また予備的ではあるが、MT16939へのcer-2aの導入が、この割合の変化を回復させるとの結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cer-2aの欠失およびT26A8.2の3'UTRの欠損が着目している精子形成異常の原因ではない可能性が高いことを示し、T26A8.4の3'UTRの欠損が精子形成異常に関与していることを示唆する結果を得た。確証を得るためにT26A8.4を変異株MT16939の生殖細胞で発現させる必要があり、この点に関して当初の予定より時間がかかっているが、MoSCIの実験系を構築できたこと問題解決に向けての基盤ができたと考える。胚発生異常に関する新たな知見を得た点、また、変異体のリボソーム解析を前倒しにして行い一定の成果を得た点に関しては当初予定より順調に研究が進展しているといえる。以上から、研究全体の進捗状況に関してはおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
T26A8.4について変異体での発現を確立するためにプロモーター領域を変えたコンストラクトを複数用意し、MoSCI法を用いて導入する。また、ゲノム編集によりT26A8.4の3' UTRを改変した線虫変異株を作製し、精子形成への影響を調べる。精子形成異常の原因遺伝子がT26A8.4の変異によるものと確定できた段階で、その変異により発現に影響を受ける他の遺伝子をオミックス解析もしくは既知の精子形成関連遺伝子に着目した解析により把握する。現時点で変異体MT16939に見られるリボソームの変化はcer-2aの欠失によるものと考えられるので、リボソームの生合成と精子形成異常との関係については慎重に検討する。胚発生異常に関してはcer-2aの欠失が影響を及ぼしている可能性がある。この点に関しては当初の研究計画にはなかったものの、本研究から得られた新しい重要な知見であるので、適宜並行して解析を行う。MT16939にcer-2aを導入した株の表現型解析を詳細に行い、胚発生とリボソームの生合成やrRNA前駆体のプロセッシングとの相関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬などをメーカーのキャンペーンの時期に購入するなどにより、当初予定していた費用を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度からの繰り越しは消耗品と謝金にあてる予定である。
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