研究実績の概要 |
本研究課題では、哺乳類ミトコンドリア蛋白質合成系の分子機構を理解することを目的とし、薬剤デザイン等の医療応用への貢献を目指した。 当該年度は、クライオ電子顕微鏡観察による哺乳類ミトコンドリア55Sリボソーム/翻訳因子複合体の構造解析を中心に研究を進めた。PRE-およびPOST-トランスロケーション複合体の構造を決定した。これまでミトコンドリアリボソーム単体の構造について報告があるが、翻訳因子やtRNAとの機能的複合体としてはじめての構造である。解像度はおよそ4Åであり、薬剤デザイン等にも十分応用できる。また、リボソームと翻訳因子(EF-G1mt/55S、EF-G2mt/55S、RRFmt/55S、RRFmt/EF-G2mt/39S)の複合体についてても解析を進め、初期構造を得た。さらに、EF-Tumt/tRNA(Ser, AGY)/55SやRF1Lmt/55S複合体の形成条件を決定した。 再構築型ミトコンドリア生体外タンパク質合成系(mtPURE system)の応用にも取り組んだ。これまでに、部位特異的に非天然アミノ酸(光クロスリンカー)を導入するシステムを確立しており、引き続きその応用を試みた。ミトコンドリアリボソームは膜タンパク質の合成に特化したユニークなペプチドトンネル構造を有することが示唆されており、新生ペプチドとリボソームトンネルの相互作用の解析を目指した。これまでのところ、翻訳条件や光クロスリンカーの種類(εANB-Lys、L-4-Benzoyl-phenylalanine)について検討を行っているが、解析に十分な光クロスリンカーの導入効率が得られていない。
|