研究課題
基盤研究(C)
相同組換えは生物に普遍的な生命現象であり、生物種多様性に寄与する一方で、DNA修復に働きゲノム安定維持にも深く関わっている。ホモタリックな分裂酵母野生型株(h90)においては、相同組換え機構は接合型変換にも働く。分裂酵母の接合型にはP(Plus)とM(Minus)があり、mat1遺伝子座に入る遺伝情報によって決定される。接合型変換は、mat1遺伝子座とサイレントな遺伝子座(mat2Pもしくはmat3M)との間で起こり、前者がレシピエント、後者の片方がドナーとなる一方向性の遺伝子変換である。この際、上記2つの遺伝子座がドナーの候補となるが、その選択は細胞の接合型(つまり、mat1座に入っている遺伝情報)により厳密に制御されており、この制御によって、P->M、M->Pへの効率的な変換が保証されている。これまでに、Class Ibグループに分類されるSwi2、Swi5、Swi6の少なくとも3つがドナー選択制御に働くことが示唆されているが、ドナー制御機構の全体像は未だ不明な点が多く残されている。これまでの知見から、未だ同定されていないClass Ib因子が存在することが予想されたため、本研究では、分裂酵母破壊株ライブラリーを用いて新規Class Ib因子のスクリーニング、及び、得られた候補因子の機能解析を計画した。破壊株ライブラリーがh+株(h90派生型で、接合型変換は起こらないが、カセット間の組換えは起こる)バックグラウンドで作製されたものであるため、当初の計画では、これを利用してスクリーニングを行なう予定であった。しかしながら、より厳密なスクリーニングを行なうために、掛け合わせによって全ての破壊株をh90株バックグラウンドで作製し、接合型変換の異常をスクリーニングすることとした。初年度は約800株の構築とスクリーニングを実施し、約10種類の候補因子を同定した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画を変更し、h90株バックグラウンドでのスクリーニングを行なうことにしたため、破壊株においてh90株との掛け合わせが必要になったが、全破壊株の約1/3のスクリーニングが完了し、平成26年度中に完了できる見通しが立った。
全てのh90破壊株を構築することによって、接合型変換の異常の有無を同時に解析できるため、より厳密なスクリーニングが可能となった。また、スクリーニングと平行して、接合型変換に異常を示すことが明らかになった候補株の機能解析を前倒しで実施し、より一層の推進を目指す。
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