研究課題/領域番号 |
25440008
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
韓 龍雲 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (50566297)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 蛍光1分子イメージング / DNA結合タンパク質 |
研究概要 |
エピジェネティクス制御、特にメチル化DNA維持機構に大きく関与するヘミメチルCpG結合タンパク質であるヒトUHRF1とゲノム構造維持に重要な働きを示す大腸菌UvrD DNAヘリケースやRuvABタンパク質の機能を蛍光一分子イメージング技術を用いて解析を行っています。UHRF1についてはヘミメチルCpGの探索過程を明らかにできるように、UvrDについてはUvrDの加水分解とDNA unwindingの連関関係を明らかにできるように、RuvABについてはRuvBの6量体リング構造を二本鎖DNA上で形成する過程を明らかにできるような研究を行っています。しかしながら、本研究で解析対象となるタンパク質はそれぞれDNAやATPとの解離定数が数百nMから数十μMと非常に高く、従来の蛍光1分子イメージング技術で解析が非常に困難でした。本研究では解離定数の非常に高いサンプルでも蛍光1分子イメージングを可能とするナノ開口基板を自らの手で作製し、作製したナノ開口基板を用いて、研究を行いました。これまでに蛍光標識されたUHRF1のヘミメチルCpG結合ドメインであるSRAに関する結果とRuvBに関する結果が得られました。 SRAに関しては二本鎖DNAまたはヌクレオソームを固定したナノ開口基板上に蛍光標識されたSRAを加え、DNA又はヌクレオソーム上に結合したSRAの数を求める事が出来ました。RuvBに関しては、RuvBはATP依存的に二本鎖DNAと結合しますが、ATPアナログであるATPγSやADPまたは両者が共存した状態でのRuvBのDNA上での結合数に関する結果が得られました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SRAとヘミメチルCpGを含むDNAとの結合解離を解析する事を計画していたので、平成25年度の研究計画ではヘミメチルCpGを含むDNAの作製とそのDNAを用いたヌクレオソームの作製を行う事を計画していました。そして、それらの作製が順調に進めば、DNAまたはヌクレオソームをナノ開口基板に固定し、SRAの結合解離を解析する予定でした。研究計画通りにDNAまたはヌクレオソームに対して、SRAがいくつ結合しているのかを計測する事が終了し、DNAとヌクレオソームに対するSRAの親和性に大きな違いが見られる事が観察され、現在ではこれらの結果を発表するための論文投稿準備中です。 また、RuvBに関してもRuvBが特異的に結合する十字型構造をしたHolliday構造に対する結合数を様々なヌクレオチド存在下で解析しました。その結果、RuvBはヌクレオチド非存在下やATPγS、ADP存在下でDNAに結合する数に違いが認められました。これまでに得られたRuvBに関する結果についても現在論文投稿準備中です。 以上、平成25年度は研究計画に近い形で研究が達成したと考えていますので、おおむね順調に進展していると自己評価しました。
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今後の研究の推進方策 |
SRAに関する研究につきましては、SRAと相互作用することが知られているDNAメチル基転移酵素であるDNMT1がSRAとヘミメチルCpG DNA複合体の安定性にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、DNMT1とDNMT1中のSRAと相互作用するドメインであるRFTドメインの2つのタンパク質を準備し、現在、用いているナノ開口基板上で形成されたSRA-DNA複合体上にDNMT1またはRFTを加える事でSRA-DNA複合体がどのような影響を受けるのかを調べる予定です。 RuvBにつきましてはATPγSまたはADP存在下に於けるDNA上でのRuvBの結合数を計測していましたが、今後はATP存在下でのRuvBのDNA上での結合する様子を観察することで、どのような過程でRuvBがDNA上で6量体リング構造を形成するのかを明らかにできるような研究を行う予定です。 UvrDにつきましてはATPに対する解離定数は50μM程度で、このような濃度で、蛍光標識ATPがUvrDと結合解離する様子をリアルタイムで観察するためには、ナノ開口基板の穴の直径を更に小さくする必要があります。この直径を70 nm程度まで小さくすると50μM程度の蛍光標識された生体分子の蛍光1分子イメージングが可能となると考えられていますので、今後は穴の直径が70 nmのナノ開口基板作製を試みる予定です。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度ではタンパク質精製や研究に必要なDNAの作製の為に主として研究費を使用する予定でしたが、タンパク質精製やDNA作製が順調に進んだため、これらの生体分子を準備するための試薬代等を当該年度は使用する必要がなくなったため、次年度使用額が生じました。 今年度はUvrDの解析のために新たに穴の直径が小さいナノ開口基板を作製する予定です。ナノ開口基板作製のための試薬は非常に高価で、今後、大量の試薬が必要と考えられ、繰り越された次年度使用額相当の研究費は新たなナノ開口基板作製のために使用する計画です。
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