研究課題/領域番号 |
25440011
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
釣本 敏樹 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30163885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 複製フォーク / DNAポリメラーゼ / in vitro 複製 |
研究実績の概要 |
精製されたヒトの複製フォークの主要な構成因子を組み合わせて、機能的な真核生物型複製フォークの構築をすることでヒト複製フォークの反応過程を3種の精製DNAポリメラーゼで再現し、複製フォークの進行が3DNAポリメラーゼで行われることの生化学的検証を目的とする。 これまでにヒトDNAポリメラーゼδ、εを精製し、さらに複製フォークの駆動DNAヘリカーゼであるヒトCMG複合体の構成因子11種類をヒトの293T細胞で共発現させた。タグ抗体よる精製で、CMG複合体が再構築されていることが確認された。しかし、複合体として回収されるのは、発現タンパク質の数パーセントであり、活性を検出するのに十分な量の精製標品はまだ得られていない。 出芽酵母の複製系での解析も視野に入れ、DNAポリメラーゼεを含む22種類の出芽酵母の複製開始反応に必須な因子の発現系を作成し、順次発現の確認と部分精製を進めた。複製系の解析を行う前に、まず酵母CMG複合体とDNAポリメラーゼεに依存したDNA合成系の再構築を行っている。 精製ヒトDNAポリメラーゼδ、εを使った解析ついては、プライマー/一本鎖DNA基質でのPCNA依存的DNA合成活性の検討を行った。PCNAローダーの違い、反応に加える塩の違いで合成活性、PCNAによる促進に違いが見られた。さらにこれらの合成産物を解析して両DNAポリメラーゼの合成特性の比較を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトCMG複合体の再構築に関しては、部分精製を行ったがヘリカーゼ活性の確認できるだけの十分な精製に至っていない。 CMG複合体再構築の別方策として、出芽酵母の同様の因子の発現系作成に着手し、すでに発現の確認まで行えた。ヒトCMG複合体と平行してこちらの精製も試みることが可能になった。 ヒトDNAポリメラーゼδ、εの合成様式の解析で、両者のPCNA, RFC依存的なDNA合成を比較できる条件が定まった。これを基にして、DNA号生産物の長さを比較し、ヒトDNAポリメラーゼδがラギング鎖に対応するDNA鎖を、εがリーディング鎖に対応するDNA鎖を合成する条件の検討が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトCMG複合体の再構築の改善については、蛍光タンパク質融合因子を発現することで、発現条件の改善を行っている。これは精製のモニターとしても使用できる。また、出芽酵母のCMGについても発現と精製を進めており、より効率の良い系を使い、精製と再構築を進めて行く予定である。 新たに設定したPCNA, RFC依存的なDNAポリメラーゼδ、εの合成条件を使い合成産物の長さを解析し、リーディング鎖、ラギング鎖の違いに相当するDNA合成様式を再現できる条件を設定する。SV40T抗原駆動型複製フォークの再構築にこの条件を適応し、この反応系でのDNAポリメラーゼδ、εによる協調的リーディング、ラギング鎖合成の再現を試みる。 出芽酵母の複製因子の調製を進め、出芽酵母の複製反応を使ったDNAポリメラーゼδ、εの機能分担の解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1. ヒトCMG複合体の発現と再構築が予想以上に効率が悪く、本格的な精製と解析に着手できなかったため。 2. 精製ヒトDNAポリメラーゼδ、ε の合成様式の解析によりPCNA依存的DNA合成活性の両者の違いを示せたが、それを反映したSV40T抗原依存的なDNA複製系の解析にはまだ着手できていないため。
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次年度使用額の使用計画 |
1. 成果を基にして、ヒト培養細胞を使い、CMG, DNAポリメラーゼδ、ε 等、複製因子の発現と精製を集中的に進める。 2. 最終年度の成果を出すために、放射性同位元素を使う取り込み実験を多く予定している。 3. 海外の学会参加費、国際誌への投稿費等の支出が予定されている。
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