研究課題/領域番号 |
25440017
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大木 進野 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 教授 (70250420)
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研究分担者 |
森 正之 石川県立大学, 生物資源工学研究所, 准教授 (00320911)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物 / 膜タンパク質 / NMR |
研究実績の概要 |
昨年度にほぼ確立した試料調製方法に従い、大腸菌と植物培養細胞系の双方で発現したTMMのNドメインを調製した。発現した試料は、可溶分画と沈殿分画にほぼ同じ程度の量が存在している。このうちの沈殿分画から試料を調製した。発現量や精製後の試料の量は、構造解析に利用するには十分な程度であった。大腸菌の場合、培地1Lに換算して数ミリグラム、植物培養細胞系の場合は、その10倍程度であった。しかしながら、精製最後の透析を行う段階で、試料の多くが沈殿として析出してしまった。ここの収率を高めるべく、pHや塩濃度の最適化、添加剤などの効果の検討を行ったが、大きな改善が見られなかった。結局、培養の量を増やすことで最終的な試料量を確保した。SDS電気泳動と質量分析によって、精製後試料の純度の確認を行った。まず、CD(円二色性スペクトル)を測定し、試料の2次構造に関する情報を得た。その結果、試料は安定な2次構造を形成している領域が少ないことが示唆された。温度変化も試みたが、同様の結果だった。次に、さらに詳しい構造情報を得るべくNMR測定を行った。幾つかの異なる温度で1Hの1次元NMRスペクトルを測定したが、データに大きな変化は見られなかった。どのスペクトルにも、低磁場シフトしたαプロトンや高磁場シフトしたメチル基由来のシグナルが観測できず、また、アミドプロトンもランダム構造を示す領域に集中して観測された。以上の結果から、TMMのNドメインには予測したような安定な高次構造が無い可能性が高い。その後、尿素などを利用して、一旦、試料を変性状態にして、そこから立体構造の折れたたみを助けるアルギニン等の共存下で透析し、リフォールドさせる実験も行った。この試料についてもCDとNMRで構造情報を得る実験を行ったが、先の試料と同様の結果だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試料は調製できるようになったものの、構造解析に適した試料が調製できていない。そのため、NMR実験などの物理化学的な実験が進展していない。また、他の領域をドメイン化したものも、発現系を植物培養細胞で構築しているが、精製方法の確立ができていないため、構造を調べるための物理化学的な実験を開始するにいたっていない。
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今後の研究の推進方策 |
幾つかの異なる領域を発現する系を用いて、試料の調製を試みる。具体的には、LRR(ロイシンリッチリピート)領域、その前後のunstructuredと予測されるリンカーまで含んだフラグメント、Nドメインにリンカーをつないだ領域、NドメインとLRRを含む細胞外ドメイン全長などである。これらについて、調製方法を確立し、安定な高次構造を形成しているかどうかを物理化学的な実験で調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に発注した試薬が年度末までに納品されなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
発現させた試料のタグ部分を切断除去する実験に使うため予定通り上記の試薬を購入する
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