研究課題/領域番号 |
25440018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武田 光広 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (90508558)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | NMR / 高圧実験 / 芳香環反転 |
研究概要 |
蛋白質のフェニルアラニン、チロシン残基芳香環は原子が細密充填した分子内部においてもCベータ-Cガンマ軸周りに反転しており、同反転は蛋白質の大きな構造揺らぎ(large amplitude breathing motion)に伴う分子内の間隙(Cavity)生成に依存する。本課題では、加圧状態における蛋白質中の芳香環反転速度をSAIL(立体整列同位体標識)-NMR法を利用して精密に測定し、反転速度の圧力依存性から構造揺らぎにより生じる間隙の大きさ(活性化体積)を見積もることを目標としている。 本年度は、ウシ膵臓由来トリプシン阻害剤(BPTI)蛋白質を対象とし、SAILフェニルアラニン・チロシンにより選択標識した試料に1-2500気圧の圧力範位で加圧しNMR交換(EXSY)実験を行い同蛋白質中の芳香環反転速度を測定した。同蛋白質は、4残基のPhe残基と4残基のTyr残基を含む。このうち、分子内部に位置するTyr23, Tyr35とPhe45は常圧でもその芳香環反転速度が比較的遅く、低温にすると環の軸に対して対照の一にあるデルタ、イプシロンのシグナルが分離観測される。EXSY実験により加圧下でも精密に芳香環反転速度を解析することができた。その結果、見積もられた値はこれまで報告されていた値と比較して20オングストロームキューブほど小さく見積もられた。芳香環の活性化体積は、蛋白質が活性化状態に移行する際に増加する体積なので本解析の結果は、蛋白質が溶液中において細密充填から少し緩んだ構造をとり、環まわりには溶液状ににおいて既にある程度空間が確保されていることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、初年度、BPTI Phe45, Tyr23, Tyr35 の芳香環反転運度における活性化体積の精密な測定を予定していた。これまでに、EXSY解析を行う、それぞれ誤差+/-4オングストロームのオーダーで解析することができたので、当初の予定は達成できたと考えられる。また、次年度以降予定していたG37A変異体の環反転運動の解析についても既に着手しはじめており、おおむね研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当初の計画通り野生型BPTI Phe45, Tyr23, Tyr35 の芳香環の活性化体積の温度依存性およびG37A変異体のTyr23 の活性化体積の測定を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初芳香環シグナル観測のために安定同位体標識芳香族アミノ酸の購入を約150万円ほど予定していた。しかし実験の進行の関係上同試料を用いた実験を次年度に行う形に変更したため、試料調製も次年度に行う形に変更した。そのため、今年度は試料購入を見送ることとした。 当初25年度に予定されていた標識アミノ酸を用いた試料調製を26年度に行う。そのため、繰り越した予算を利用し同標識アミノ酸を購入する予定である。
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