研究課題/領域番号 |
25440022
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松村 浩由 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324809)
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研究分担者 |
向 由起夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (60252615)
佐原 健彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (40357166)
森田 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (60371085)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Tup-Cyc8複合体 / コリプレッサー / 構造機能解析 |
研究実績の概要 |
昨年に引き続いてTup1のN末端領域(Tup1N)とCyc8の複合体の結晶化を行った。しかし、構造解析可能な良好な回折強度データが得られなかったため、X線小角散乱法を用いて低分解能での構造解析に取り組んだ。まず、Cyc8単体での構造解析に取り組んだところ、Cyc8は多量体を形成し、まるでTup1を取り囲むような構造をしていることが示唆された。厳密に何量体を形成しているかといったストイキオメトリーを決定するためには更なるデータ収集が必要であるが、もしCyc8が単体のときと同様な形を保持してTup1と結合しているとすれば、私達が以前報告したTup1変異体の実験結果と合致している。機能解析について、昨年度は、Tup1 のN末端領域(1-92アミノ酸)に含まれる74-76アミノ酸位の3連続グルタミン酸(EEE)が転写抑制に重要な機能をもつことをアラニン置換変異株を用いて示したが、本年度は3連続グルタミン酸をすべてグルタミン(QQQ)あるいはアスパラギン酸(DDD)に置換した変異株を作製し、接合型、凝集性および標的遺伝子の転写抑制能を定量化した。tup1-QQQ変異株は野生型TUP1株と同じ転写抑制能を示したのに対して、tup1-DDD変異株はtup1-AAA変異株と同様にtup1遺伝子破壊株と野生型株の中間程度の転写抑制能を示した。従って、Tup1Nの3連続グルタミン酸はその負電荷ではなく、その側鎖長が転写抑制に重要であると結論した。ヒストンと相互作用すると報告されている中央領域(93-281アミノ酸)を欠失させたtup1変異株が、意外なことに野生型株と同様にプロモーター領域をヘテロクロマチン状態に維持することを明らかにした。この結果は、Tup1がヒストンとの相互作用と介せずに転写抑制するのか、あるいはTup1が中央領域以外の領域でヒストンと相互作用するのかを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状でX線結晶構造解析に関しては、結晶化には成功しているものの、構造解析が可能な高分解能データの収集が困難であった。そこで新たにX線小角散乱法に取り組んだが、これについては予想外に良いデータが得られ、Cyc8単体の分子の外形まで決定できることができた。よって、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では、Cyc8単体の多量体形成様式やTup1N-Cyc8複合体の構造決定にまでは至っていない。今後は、他の物理化学的手法(例えば、等温滴定熱測定)やより多くのX線小角散乱のデータの蓄積によって、Cyc8単体の多量体形成様式とTup1N-Cyc8複合体の立体構造の決定をしたいと考えている。また、今期に新たに分担者が加入し、大腸菌や通常の酵母の系では発現が困難だったTup1全長の発現を、酵母の低温誘導発現系によって試験する予定である。これが得られれば全長の発現・精製・解析を行う。 また、ヒトTup1ホモログであるTLEが、我々が示した酵母Tup1と同様に4量体を形成し、興味深いことにヒストンH4と相互作用することが示された(EMBO J., 33:719)。この報告は我々の結果と一致しており、Tup1が中央領域以外の領域でヒストンと相互作用する可能性を強く示唆する。そこで、今後はTup1の中央領域に加えて、四量体形成に必要なN末端領域についてもヒストンとの相互作用を解析することも計画する。大腸菌にてヒストンH3とH4を発現し可溶化することに成功したので、GST-Tup1(1-92)およびGST-Tup1(1-92)AAAとの結合をGSTプルダウンアッセイにより調べる。また、これと並行して、出芽酵母から粗精製したヒストンタンパク質(H2A、H2B、H3、H4)を用いてFar-western法によりTup1(1-92)およびTup1(1-92)AAAとの結合を確認する。また、中央領域を欠失させたTup1が標的遺伝子プロモーター領域にリクルートされることをクロマチン免疫沈降法により調べることも計画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Tup1N-Cyc8の単体と複合体の発現・精製を行って研究を進めてきており、解析は計画どおり進みつつある。より詳細な解析を進めるためにも、Tup1全長の構造情報が必要となり、今年度、新たな分担者が加入して酵母低温誘導発現系を試験することになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
Tup1全長の構造情報に向けて、酵母低温誘導発現系によるTup1全長の発現の試験、およびこれが得られれば全長の発現・精製・解析を行うため、これらの実験に必要な消耗品にあてる予定である。
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