研究課題/領域番号 |
25440024
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
北野 健 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40346309)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | タンパク質 / DNA / ヘリカーゼ / 結晶化 / X線構造解析 / ブルーム症候群 |
研究概要 |
ブルーム症候群は,10 代にして様々な悪性腫瘍を頻発する高発がん性の病気(常染色体劣性の遺伝病)である。二本鎖 DNA を一本にほどく(巻き戻す)ヘリカーゼの一種,BLM(Bloom syndrome protein)が変異によって機能欠損してしまうことで引き起こされる。本研究では,X線結晶解析法により BLM タンパク質の立体構造を決定して,その高度なヘリカーゼ活性の仕組みを明らかにすることを目的としている。 今年度は,BLM のヘリカーゼ活性に必須の役割を担っている,BLM RQC(RecQ C-terminal)ドメインのX線結晶解析を進めた。その結果,同ドメインにヒ酸イオンが結合した状態のタンパク質立体構造を,分解能 2.9 オングストロームで決定することができた。本構造は,タンパク質立体構造データベース PDB(Protein Data Bank)に原子座標とX線回折データを登録して,インターネット上で一般公開した(PDB ID:3WE3)。またヒ酸イオンの結合状態を確認するために,As 原子の異常分散効果を測定したX線回折データを利用して,差フーリエ電子密度マップの作成も行った。 次に,BLM RQC ドメインがどのような配向で DNA に作用するのかを調べるために,3種類の点変異体(S1121A,K1125A,R1139A)および1種類の欠損変異体(loop-deletion)のタンパク質発現コンストラクトを作成した。クロマトグラフィーで精製したタンパク質試料と,合成した DNA 試料を使って,ゲルシフト電気泳動法および蛍光偏光解消法による分子間相互作用解析を行った。その結果,Arg1139 の塩基性側鎖が,DNA との相互作用にとりわけ重要であることが明らかとなった。 これらの研究成果をまとめた論文を作成して,国際科学ジャーナルに発表することができた(Kim et al, 2013, Sci. Rep., 3, 3294.)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
BLM RQC ドメインの研究論文を国際科学ジャーナルに投稿したさい,予想に反して,掲載のために多くの追加実験の実施を要求された。これらの作業(BLM 変異体と DNA のゲルシフト電気泳動解析など)を優先させたことで,予定していた結晶化実験に遅延が生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に決定した BLM RQC ドメインの立体構造情報を活用して,BLM ヘリカーゼが,ホリデイジャンクションなど入り組んだ形状の DNA の解きほぐす仕組みの解析を進める。特に,BLM ヘリカーゼと WRN ヘリカーゼ(日本人に多い早老症の病気であるウェルナー症候群の原因タンパク質)の立体構造の違いを,コンピュータ解析や生化学実験などによって調べて,その結果を学会や学術雑誌で発表することを目指す。 また引き続き,新しい立体構造情報の取得を目指して,BLM ヘリカーゼ(および WRN ヘリカーゼ)の結晶化実験を進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,BLM タンパク質の研究の進捗状況に合わせて,予算執行計画を変更したことに伴うものである。 今後,未使用額の研究費は,タンパク質と DNA のX線結晶解析に必要な,消耗品器具の購入,試薬の購入,放射光施設スプリング-8 または高エネルギー加速器研究機構 (KEK) への国内旅費,学会で研究成果を発表するための国内および海外旅費,そして科学雑誌で研究成果を論文発表するための出版料などに使用する予定である。
|