研究実績の概要 |
ブルーム症候群は,10 代にして様々な悪性腫瘍を頻発する高発がん性の病気 (常染色体劣性の遺伝病) である。二本鎖 DNA を一本にほどく (巻き戻す) ヘリカーゼの一種,BLM (Bloom syndrome protein) が変異によって機能欠損してしまうことで引き起こされる。本研究は,BLM タンパク質の立体構造研究を進めて,その優れたヘリカーゼ活性の仕組みに迫ることを目的としている。 今年度は,初年度に構造決定した BLM RQC (RecQ C-terminal) ドメインのX線結晶構造 (Kim et al., 2013, Sci. Rep. ; PDB IDs:3WE2 and 3WE3) と,前年度に作成した BLM ヘリカーゼとホリデイジャンクション (ゲノム損傷の修復中間体である十字型 DNA 構造) の複合体モデル構造(Kitano, 2014, Front. Genet.)を活用して,BLM ヘリカーゼが,入り組んだ形状の DNA を解きほぐす仕組みの解析を進めた。この結果,巻き戻しの困難な DNA も基質とできる立体構造上の仕組みが,RQC ドメインにあることが示唆された。 また,BLM の研究に加えて,他のタンパク質の構造研究も行った。マウス由来ラディキシン FERM ドメインと,膜型マトリックスメタロプロテアーゼ (MT1-MMP) 細胞質ペプチド複合体のX線結晶構造を,分解能 2.4 オングストロームで決定して,論文発表した (Terawaki et al., 2015, Genes Cells. ; PDB ID : 3X23)。一方で,創薬ターゲットとなり得るヒト由来ホスホジエステラーゼ-12 (PDE12) のX線結晶構造を,分解能 1.82 オングストロームで決定して,Protein Data Bank に登録し,一般公開した (PDB ID: 4ZKF)。
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