常染色体劣性の遺伝病のひとつであるブルーム症候群 (Bloom syndrome) は,若くして様々な悪性腫瘍を頻発する高発がん性の病気である。二本鎖 DNA を一本にほどく (巻き戻す) ヘリカーゼの一種,BLM (Bloom syndrome protein) が変異によって機能欠損してしまうことで引き起こされる。しかし,ヒトが有する他のヘリカーゼが,なぜ BLM の機能を代替できないのかなど,詳しい発症の仕組みは分かっていない。本研究は,ヒト由来の BLM タンパク質を対象とした立体構造研究を進めて,その特殊なヘリカーゼ活性の仕組みに迫ることを目的としている。 今年度は引き続き,BLM ヘリカーゼによる DNA 解きほぐし反応の構造研究を進めると同時に,これまでに得られた研究結果のとりまとめ作業を行った。これら成果の一部は,米国・フレッドハッチンソン癌研究センターで開催された国際シンポジウム RECQ 2016 (3rd International Meeting on RECQ Helicases in Biology and Medicine) の招待講演で発表を行った。同シンポジウムでは,研究者のみならず,医師や患者とその家族が世界中から一同に会し,病気の原因と治療法を探るための非常に活発な討議が交わされた。また本研究成果については,国内の今年度学会でも発表を行った。 さらに BLM の研究に加えて,他のタンパク質を対象とした構造研究も行った。特に,細菌由来の過酸化物分解酵素の立体構造研究を進めて,酵素反応機構の一端を明らかにすることができた。
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