研究課題/領域番号 |
25440026
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
溝端 知宏 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50263489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シャペロニン / ストップト・フロー解析 / 円順列変異 / フォールディング |
研究実績の概要 |
大腸菌シャペロニンGroELの蛋白質フォールディング補助メカニズムを各種変異体の解析を通して再検証することを目指す本研究計画において,平成26年度に得た主な成果を以下に変異体種別に要約する。 1.円順列変異体GroELCP86-C4の詳細解析:GroELのドメイン間を連結するポリペプチド鎖主鎖が1本「切断」された状態を模しているCP86-C4変異体について,その性質を引き続き詳細に解析した。平成26年度では特異的試薬の結合によりGroELCP86-C4の機能的性質,特にATP加水分解活性と補助シャペロニンであるGroESとの結合様式において差異を誘発することに成功した。成果の一部は米国Protein Society年会で発表した。 2.GroEL D398A変異体の詳細解析:ATP加水分解活性が野生型の2%程度に低下したGroEL D398A変異体では,トリプトファン蛍光を指標にしたストップト・フロー速度論的解析を実施した。その結果,D398A変異体ではGroELのサブユニット間で交わされる情報に違いが見られ、機能変化につながっていると思われた。 3.GroEL "CXXC"変異体の詳細解析:GroEL "CXXC"変異体はGroELの蛋白質フォールディング補助能力に新たな機能を付加することを目指して作成された変異体であるが,この変異体は当初の想定と異なる新しい性質(ATP加水分解をほとんど必要としないフォールディング補助能力)を示したため,GroELの分子メカニズムを解析する上の新しい研究道具として注目していた。平成26年度ではこの変異体のストップト・フロー解析に成功し,その結果GroEL "CXXC"変異体は野生型GroELが見せない複雑な動的振る舞いを見せることが明らかとなった。この分子運動はATPがGroELに結合しない状態でも観測された点が最も興味深い特徴であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,「シャペロニンのフォールディング補助メカニズムの再検証」を目標に,研究発足当時に用意していた変異体の詳細な解析をほぼ完了し,シャペロニンメカニズムの再検証を学会に提言することに成功した。一方で,当初の計画には組み込まれていなかった新しい変異体の詳細解析を通して,シャペロニン分子メカニズムのまた新たな側面を見いだす成果を平成26年度の実験より得ている。本研究では,平成27年度以降GroEL "CXXC"変異体に特に注目した研究を実施することで「GroELサブユニットのドメイン構造に着目した分子メカニズムの解析」という当初目標に加え,「GroELのATP加水分解活性」「GroELの二重リング構造」に注目した一層詳細なメカニズム解明を進める。 以上の状況より,本研究の目的達成度は「当初計画していた方向性を適宜修正しつつ,概ね予定通り」であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では引き続きGroEL "CXXC"変異体の解析を中心に,シャペロニンの蛋白質補助メカニズムを詳細に見直す計画を立てている。GroEL "CXXC"変異体は機能的性質が野生型GroELと大きく異なり,また蛍光ストップト・フロー解析を通して推察されるサブユニットの構造変化にも大きな違いが見られたため,当面はこの機能の違いとサブユニット構造変化の違いを関連づける研究に注力する。また,この変異体には「大腸菌の生育をサポートできないVer.1変異体」と「大腸菌の生育をサポートするVer.2変異体」の二種類を作成しており,Ver.1は1箇所のアミノ酸残基置換でVer. 2に変換される。この両者をストップト・フロー蛍光測定により比較・解析する準備がほぼ整っているので,平成27年度はこの比較研究も併せて実施する。 また,研究計画最終年である本年は,次年度以降の研究の方向性を探るべく新しい実験に着手する。本研究ではこれまでもっぱら細胞外で精製蛋白質を解析する手法を重視し,実験を重ねてきたが,本研究で用いた変異体が細胞内環境でどのように振る舞うのかを蛍光顕微鏡等を利用して解明する実験に着手する。
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