研究課題
多くのタンパク質は様々な条件下でコンフォメーションが変化することでβ構造に富むアミロイド線維という凝集体を形成することが知られている。中でも脳神経変性病に関連するタンパク質がどのようにコンフォメーション変化をして,アミロイド線維形成をするかという分子論的メカニズムと凝集過程で生じる細胞毒性やそれらの制御方法について研究を行った。本年度は特にパーキンソン病発症に関わっているαシヌクレインタンパク質のアミロイド線維凝集形成機構とその制御について研究を行い,以下について明らかにした。αシヌクレインタンパク質は本来立体構造を有しておらず,溶液中では非常に柔軟性に富む,いわゆる天然変性タンパク質である。このタンパク質を試験管内で長時間インキュベーションするとアミロイド線維凝集を形成するが,このときアミロイド核を形成する疎水性に富むアミノ酸残基領域とその前後周辺に存在している正電荷と負電荷アミノ酸残基は,アミロイド線維凝集形成に重要な因子となり得ることを蛋白質工学的変異導入法によって明らかにした。また,アミロイド線維の安定性にもこの電荷が効いていることが明らかになった。さらに,アミロイド線維の形成と溶解に超音波照射が効果的であることも分かった。αシヌクレインのアミロイド線維は超音波照射によって分解されるが,返って細胞毒性が高くなることが明らかになった。これらの結果は,αシヌクレインのアミロイド線維凝集と細胞毒性の制御は複雑であることを示している。一方,アルツハイマー病の原因ペプチドAβ1-42の凝集抑制にポリフェノールが有効であることも明らかにし,その細胞毒性も調べた。モデルマウスの実験結果も現在得られつつある。
2: おおむね順調に進展している
アミロイド線維凝集を形成するパーキンソン病発症原因タンパク質のαシヌクレインの反応機構をアミノ酸レベルで明らかにできたこと,そして中間体分子種の細胞毒性評価ができたことなど,研究は順調に進んでいる。
脳神経変性病の主要なものであるアルツハイマー病の原因ペプチドAβ1-42の凝集と細胞毒性の関係についてマウスを利用した研究成果をしっかりと出して行く予定である。また,ポリフェノールの有効性についてもin vivoでの結果をはっきりとさせる。さらに,ALSに関係するSOD1や白内障に関わるクリスタリン蛋白質の凝集抑制についても発展的に調べることにしている。
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Biochim. Biophys. Acta/Proteins and Proteomics
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