研究課題/領域番号 |
25440028
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305)
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研究分担者 |
神鳥 成弘 香川大学, 総合生命科学研究センター, 教授 (00262246)
吉原 明秀 香川大学, 希少糖研究センター, 助教 (40548765)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 単糖異性化酵素 / L-リボースイソメラーゼ / 希少糖 / 触媒反応機構 / 微小重力環境タンパク質結晶化 / 酵素・基質複合体 / D-タガトース 3-エピメラーゼ |
研究実績の概要 |
昨年度構造を決定したL-リボースとL-リブロース間の異性化を触媒する希少糖生産酵素、Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(AcL-RI)のX線結晶構造解析の論文発表(H. Yoshida et al., FEBS J., 2014)に続き、今年度は希少糖研究センターとの共同研究によりCelulomonas parahominis由来L-リボースイソメラーゼ(CpL-RI)の構造決定および四量体構造の必要性について解析を行い、論文誌に投稿した(Terami et al.)。これらを通して、L-リボースイソメラーゼの糖環開環機構を含めた触媒反応機構を提唱し、さらに、L-リボースイソメラーゼのホモ四量体構造は構造の安定性とともに酵素活性を示すには不可欠であることを明らかにした。 国際宇宙ステーション(ISS)を利用したJAXA宇宙実験の結晶化実験(第2期 第1回宇宙実験)において、微小重力空間で成長した希少糖生産酵素Pseudomonas cichorii由来D-タガトース3-エピメラーゼ(D-TE)の変異酵素の結晶を用いて希少糖誘導体であるデオキシ希少糖、1-デオキシ L-タガトースとの複合体構造(1.73Å分解能)を得ることができた。また、このD-TEの変異酵素を用いたX線結晶構造解析では、デオキシ希少糖や糖アルコールとの多数の複合体構造を決定し、デオキシ糖は活性部位において逆向きに結合できることや、疎水性環境の高い分子表面にも結合する可能性が高いことを示した。D-TEのデオキシ希少糖の認識機構ならびにデオキシ希少糖が阻害効果を示す可能性をもつことが明らかとなり、現在論文投稿の準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
希少糖生産酵素Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(AcL-RI)のX線結晶構造解析に続き、希少糖研究センターとの共同研究により新たな希少糖生産酵素Celulomonas parahominis由来L-リボースイソメラーゼ(CpL-RI)の構造も決定することができ、順調である。 国際宇宙ステーション(ISS)を利用したJAXA宇宙実験の結晶化実験については、反応中間体における水素原子の電子密度が得られる超高分解能のデータ収集には至っていないが、微小重力空間で成長した希少糖生産酵素Pseudomonas cichorii由来D-タガトース3-エピメラーゼ(D-TE)の変異酵素の結晶を用いて希少糖誘導体であるデオキシ希少糖、1-デオキシ L-タガトースとの複合体構造を得ることができた。その他にもデオキシ希少糖や糖アルコールとの多数の複合体構造解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の予定通り研究が進んでおり、デオキシ希少糖と希少糖生産酵素の複合体構造解析において、デオキシ糖の結合の特徴が示されたことから、この構造情報をもとにデオキシ糖に対してより効率的な基質認識ができるよう変異酵素の作成を行っていく。また、分子表面において開環したデオキシ糖が結合した構造も得られたことから、D-TEの糖の開環機構には基質結合部位に結合してから開環されるプロセスとは異なる機構があることも考えられる。D-TEの糖の開環機構の解明についても新たな変異酵素の構築も含めて検討していく。宇宙実験については、D-TEとデオキシ希少糖、1-デオキシ L-タガトースとの複合体構造を得ることができたが、今年度も、第2期第3回宇宙実験の候補サンプルとなっており、引き続き、超高分解能のデータ収集を目指して研究を進めていく。
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