真核生物の細胞諸機能は、高度に発達した様々なオルガネラによって支えられている。生体膜で仕切られたオルガネラが、正常に発達、機能するためには、細胞質で合成されたタンパク質が、特定のオルガネラへ正確に配送される必要があり、万一誤配送された不適切なタンパク質を分解、除去する品質管理機構が重要である。ペルオキシソーム膜タンパク質はPex19pによってペルオキシソームへと運ばれるが、最近、ミトコンドリア外膜に局在するAAAタンパク質Msp1/ATAD1が、ミトコンドリアに誤局在した、本来ペルオキシソームに運ばれるはずのPex15p/Pex26pタンパク質をミトコンドリア外膜から速やかに分解、除去することが報告された。Msp1/ATAD1は酵母からヒトまで、真核生物種間で高度に保存されていることから、普遍的なミトコンドリア外膜タンパク質の品質管理機構の解明に、Msp1/ATAD1の構造、機能解析を行った。これまでに酵母Msp1、ヒトATAD1の結晶化に成功し、現在、酵母Msp1では全320 残基中230残基の原子モデルを構築し、構造精密化を行っている。ヒト由来ATAD1の結晶データからは機能を反映した6回対称性を持つことが示唆されている。 またペルオキシソームマトリックス蛋白質の移送に必須のPex7pに結合する新規タンパク質として単離されたP7BP2の構造解析では、高速AFM観察で、AAA六量体リング構造の典型的なサイズである直径約16 nm、高さ約3 nmの円板型で、中央に穴のあるリング構造が観察された。更にリングが開裂し、伸びたような構造も観察されたことから1本のポリペプチド鎖で疑似六量体リング構造をとる、ダイニンタイプの新規AAA蛋白質であることがわかった。これまでの生化学的な性格付けとあわせて、これらの結果を論文にまとめた。近日中に投稿予定である。
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